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    牛乳はなぜ白い?

    白い色素はありません。たんぱく質や脂肪の小さな粒が、あらゆる色の光を散らすので白く見えます。

    朝の食卓に置かれた、コップ一杯の牛乳。あまりに見慣れているので、牛乳が白いことを不思議に思う人はあまりいないでしょう。けれども、あらためて考えると奇妙です。牛乳はおよそ87%が水で、残りはたんぱく質や脂肪、乳糖などです。水は透明ですし、白い絵の具のような色素が入っているわけでもありません。

    では、あの白さはどこから来るのでしょうか。答えの鍵は、牛乳の中を漂う、目には見えないほど小さな粒にあります。

    牛乳は「粒の浮かんだ水」

    牛乳は、水の中にたくさんの小さな粒が散らばった液体です。おもな粒は二種類あります。

    ひとつは脂肪の粒、「脂肪球」です。牛乳の脂肪は溶けずに、薄い膜に包まれた小さな玉となって浮かんでいます。大きさは平均すると直径2〜4マイクロメートル(1マイクロメートルは1000分の1ミリ)ほどです。市販の牛乳の多くは、この脂肪球を細かく砕く「均質化(ホモジナイズ)」という処理がされていて、粒は0.4マイクロメートルほどまで小さくなっています。

    もうひとつは、たんぱく質の粒です。牛乳のたんぱく質の約8割は「カゼイン」と呼ばれ、たくさんの分子が集まって「カゼインミセル」という球状のかたまりを作っています。その大きさは、およそ0.1マイクロメートル。脂肪球よりさらに小さな粒です。

    木のテーブルの上に置かれた、牛乳の入った透明なコップ
    コップに注いだ牛乳。中には、目に見えないほど小さな脂肪やたんぱく質の粒が無数に漂っています。出典: Santeri Viinamäki / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons

    光をあらゆる方向にはね返す

    私たちの目に見える光は、波長がおよそ0.4〜0.7マイクロメートルの電磁波です。牛乳の中の粒は、ちょうどこの波長と同じくらいか、それより少し大きいものが多いのです。

    このくらいの大きさの粒に光が当たると、光はまっすぐ進めずに、あちこちの方向へ散らばります。これを「散乱」といいます。しかも、波長と同じくらいかそれより大きな粒は、赤も緑も青も、どの色の光もほぼ同じように散らします。

    牛乳の中では、この散乱が数えきれないほどくり返されます。光は粒から粒へとはね返されて、奥まで届かず、やがてあらゆる方向へ出ていきます。すべての色がまんべんなく混ざって目に届くので、私たちには白く、そして向こうが透けない色に見えるのです。

    雲や雪が白いのも、同じ理由です。雲は小さな水滴、雪は氷の粒の集まりで、一粒ずつは透明なのに、たくさん集まると光を散らして白く見えます。ビールの泡や砂糖の粉が白いのも、仲間の現象です。

    脂肪を抜くと、ほんのり青くなる

    面白いのは、脂肪を取り除いた脱脂乳です。よく見ると、ふつうの牛乳よりわずかに青みがかって見えることがあります。

    脱脂乳で光を散らすのは、ほとんどカゼインミセルだけになります。カゼインミセルは光の波長より小さいため、波長の短い青い光を、赤い光よりも強く散らす性質があります。その結果、散らされた光に青が多く混じり、ほんのり青白く見えるのです。

    これは、空が青く見えるしくみとよく似ています。空気の分子は光の波長よりずっと小さく、青い光を強く散らすので、昼間の空は青くなります。

    水を入れたビーカーと、牛乳を少し混ぜた水を入れたビーカーに横から光を当て、右側だけ光の筋が見えている様子
    左は水、右は牛乳を少し混ぜた水。横から光を当てると、牛乳の粒が光を散らすため、右のビーカーだけ光の通り道が見えます。出典: ZuzanaBrabcova / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons

    コップの中に夕焼けを作る

    このしくみは、家でも確かめられます。透明なコップに水を入れ、牛乳を数滴だけ落としてよく混ぜます。暗い部屋で懐中電灯の光を横から当てると、水の中に光の通り道が浮かび上がり、横から見ると少し青っぽく見えます。

    反対側から、光源のほうをのぞきこんでみてください。今度は光が黄色やオレンジ色がかって見えるはずです。途中で青い光が横へ散らされてしまい、残った赤っぽい光が届くからです。夕焼けが赤いのとそっくりの現象を、コップ一杯で再現できるのです。

    牛乳を濃くしていくと、光はもっとたくさん散らされて、やがて真っ白になります。白さとは、色が「ない」のではなく、すべての色が散らばって混ざり合った姿なのです。

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