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    梅干しは酸っぱいのにアルカリ性食品?

    燃やした灰の性質で分ける古い分類ではアルカリ性。ただし食べ物で血液のpHが変わることはありません。

    梅干しをひと粒口に入れると、思わず顔がくしゃっとなるほどの酸っぱさです。ところが、その梅干しが「アルカリ性食品」の代表選手として紹介されているのを、見たり聞いたりしたことはないでしょうか。レモンも同じように、酸っぱいのにアルカリ性食品だといわれます。

    酸っぱいものは酸性のはず。それがなぜアルカリ性なのでしょうか。そして、「体をアルカリ性に保つと健康にいい」という話は本当なのでしょうか。順番に見ていきましょう。

    決め手は「燃やしたあとの灰」

    梅干しの酸っぱさのもとは、おもにクエン酸です。梅干しそのものをなめれば、まちがいなく酸性です。

    ところが、「酸性食品」「アルカリ性食品」という分類は、食べ物そのものの酸っぱさで決めるのではありません。食べ物を燃やして、残った灰を水に溶かし、その性質を調べるという方法で分けるのです。

    燃やすと、クエン酸のような有機物は二酸化炭素と水になって消えてしまいます。あとに残るのはミネラルです。カリウム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウムが多ければ灰はアルカリ性に、リン、硫黄、塩素が多ければ酸性になります。梅干しやレモンはカリウムなどを多く含むため、灰はアルカリ性。そこで「アルカリ性食品」に分類されるのです。

    白い背景の上に置かれた、しわの寄った赤い梅干しひと粒
    赤くしわの寄った梅干し。酸っぱさのもとは、おもにクエン酸です。出典: Batholith / Public domain / Wikimedia Commons

    反対に、肉や魚、卵、米などは「酸性食品」とされます。たんぱく質にはリンや硫黄が多く含まれているからです。酸っぱくもなんともない食べ物が酸性食品で、酸っぱい梅干しがアルカリ性食品。ややこしい名前の正体は、この「灰」にありました。

    19世紀のヨーロッパで生まれた考え方

    この考え方の始まりは、19世紀のヨーロッパにさかのぼります。フランスの生理学者クロード・ベルナールは、ウサギに草ではなく肉を与えると、尿がアルカリ性から酸性に変わることに気づきました。そこから食べ物を燃やした灰の性質が調べられるようになり、肉食に偏ると体が酸性に傾くのではないか、という説も唱えられました。

    日本では大正時代ごろから健康法の理論として取り入れられ、「酸性食品を食べすぎると体が酸性になり、病気になりやすい」という話が広まったとされます。梅干しは、そのなかで体によいアルカリ性食品の代表として語られてきました。

    血液のpHは食べ物で変わらない

    では、アルカリ性食品を食べると、体はアルカリ性に傾くのでしょうか。現在の医学や栄養学の答えは「いいえ」です。

    私たちの血液のpHは、7.35〜7.45というごく狭い範囲に保たれています。血液には酸やアルカリを打ち消す緩衝のしくみがあり、さらに肺が二酸化炭素を吐き出し、腎臓が余分な酸を尿に捨てることで、たえずバランスがとられています。食事によって血液のpHが変わるとしても、ごくわずかで一時的なものにすぎません。もし血液のpHが大きく変わってしまったら、それは食べ物の問題ではなく、すぐに治療が必要な病気の状態です。

    日本の栄養学の分野でも、1980年代の後半ごろから「酸性食品・アルカリ性食品」という分け方に疑問が示されるようになり、健康の目安としては意味がない分類とみなされるようになりました。

    屋外の板の上に広げた網に、赤い梅干しがぎっしり並べて干されている様子
    天日に干される梅。塩漬けにした梅を日に干して作るのが、昔ながらの梅干しです。出典: Σ64 / CC BY-SA 3.0 / Wikimedia Commons

    変わるのは「尿」のほう

    ただし、食べ物の影響がまったく体に現れないわけではありません。食事の内容によって変わるのは、尿のpHです。肉を多く食べれば尿は酸性寄りに、野菜や果物を多く食べればアルカリ性寄りになります。腎臓が、体に入ってきた酸やアルカリを調整して外へ出しているからです。

    1995年には、食べ物が腎臓にどれくらいの酸の負担をかけるかを見積もる「PRAL(潜在的腎酸負荷)」という指標が提案され、尿路結石や骨の健康との関係が研究されています。とはいえ、これは「体をアルカリ性にする」という話とは別物です。

    梅干しは昔から日本の食卓を支えてきた食べ物ですが、塩分が多い食品でもあります。体のためを考えるなら、酸性かアルカリ性かよりも、食べる量や塩分に目を向けるほうがよさそうです。

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