ポップコーンはなぜはじける?
粒の中の水分が約180℃で水蒸気になり、その圧力で硬い皮が破れて中身が一気にふくらむからです。
180℃
映画館の売店から漂う、香ばしいにおい。フライパンにふたをして火にかければ、やがて中から「ポン!」「ポポン!」とにぎやかな音が聞こえてきます。硬くて小さな黄色い粒が、ほんの一瞬で白くふわふわの姿に変わるのは、何度見ても不思議なものです。
ところが、夏に食べるゆでトウモロコシの粒をフライパンで熱しても、ポップコーンにはなりません。ポップコーンの粒には、はじけるための特別なしくみが備わっているのです。
粒の中の小さな圧力鍋
ポップコーンに使うのは、「爆裂種」と呼ばれる種類のトウモロコシです。粒の中には、かたいでんぷんがぎっしり詰まっていて、そこに重さの14〜20%ほどの水分が含まれています。
この粒を加熱すると、中の水分が水蒸気に変わろうとします。ところが爆裂種の粒は、外側の皮がとても丈夫で、水分を通しにくいつくりになっています。水蒸気は外へ逃げられず、粒の中の圧力はどんどん高まっていきます。いわば、粒の一つひとつが小さな圧力鍋になるのです。
圧力は、最終的に大気圧の9倍ほどにも達します。その間に、熱と水蒸気で中のでんぷんはやわらかく、とろりとした状態になっていきます。そしてついに皮が耐えきれずに破れると、圧力が一気に下がり、水蒸気が急激にふくらみます。やわらかくなったでんぷんは泡のようにふくらみ、外の空気に触れて冷えると、そのままの形で固まります。こうしてできるのが、元の粒の20〜50倍にもふくらんだ、あの白いポップコーンです。
ふつうのトウモロコシがはじけないのは、皮がポップコーンほど丈夫でなく、水蒸気が少しずつ漏れてしまうからです。
はじける温度は約180℃
2015年、フランスの物理学者エマニュエル・ヴィロとアレクサンドル・ポノマレンコが、ポップコーンがはじける瞬間をくわしく調べた研究を発表しました。
2人は、粒を熱しながら、1秒間に数千コマを撮影できる高速カメラでその様子を記録しました。その結果、粒のほとんどがはじける温度は、**約180℃**であることがわかりました。粒の形や大きさが違っても、この温度はあまり変わりません。2人は、これが「圧力に耐える容器が、ある限界で破裂する」という単純なモデルで説明できることを示しました。
また、粒がはじけるのは、ほんの数百分の1秒のできごとでした。熱し方にも注意が必要で、急に熱しすぎると中心までやわらかくなる前に皮が破れ、芯の残ったポップコーンになります。逆に、ゆっくり熱しすぎると、粒の根もとのわずかなすき間から水蒸気が漏れてしまい、はじけないまま残る粒が増えてしまいます。
跳ねるための「足」と、ポンという音
ポップコーンは、はじけるだけでなく、ぴょんと跳ね上がります。高速カメラの映像からは、その秘密も見えてきました。
皮が破れると、中からでんぷんのかたまりが飛び出します。これが「足」のように鍋の底を押し、つぶれた反動で、粒全体が数ミリから数センチの高さまで跳ね上がっていたのです。研究者たちは、ポップコーンを、種を勢いよく飛ばす植物と、筋肉でジャンプする動物との「中間」にあたる存在だと表現しています。
では、あの「ポン」という音は何の音なのでしょうか。皮が割れる音のようにも思えますが、映像と音を同時に記録して照らし合わせてみると、音が鳴るタイミングは、皮が割れた瞬間とは一致しませんでした。研究者たちは、粒の中に閉じこめられていた水蒸気が勢いよく外へ抜け出すことが、あの音のもとになっていると考えています。
約6700年前のポップコーン
ポップコーンは、人類が楽しんできたおやつのなかでも、とびきり古いもののひとつです。トウモロコシは約9000年前に、いまのメキシコで栽培化されたと考えられています。そして南米ペルーの北部の海岸にある遺跡からは、約6700年前とされるトウモロコシの穂軸が見つかり、そのなかにポップコーンとして食べられていたとみられるものが含まれていると報告されています。
ポップコーンがいまのように手軽なおやつになったのは、19世紀の終わりのアメリカでのことです。シカゴの菓子店主チャールズ・クレターズが、蒸気で動くポップコーン製造機を作り、街角の屋台でできたてのポップコーンが売られるようになりました。