雷の光と音はなぜずれる?
光は1秒に約30万キロメートル、音は約340メートルしか進まないからです。速さは約88万倍も違います。
夏の夕方、遠くの空がピカッと光る。いち、に、さん……と数えていると、少し遅れてゴロゴロという音が聞こえてくる。雷の光と音がずれて届くことは、多くの人が経験から知っています。
けれども、光と音は、稲妻が走ったまさにその瞬間に、同じ場所で生まれています。それなのに、私たちのもとへは別々に届く。違いを生んでいるのは、光と音の「足の速さ」です。
速さは約88万倍の差
光は、1秒間におよそ30万キロメートル進みます。地球を1秒で7周半する速さです。一方、空気中を伝わる音の速さは、1秒間に約340メートル。光は音のおよそ88万倍も速いのです。
10キロメートル先に雷が落ちたとしましょう。光がこの距離を進むのにかかる時間は、わずか3万分の1秒ほど。私たちにとっては、光った瞬間に見えたのと同じです。ところが音は、同じ距離を進むのに30秒近くかかります。光と音のずれは、ほぼそのまま音が旅をしている時間なのです。
このずれを使えば、雷までのおよその距離がわかります。光ってから音が聞こえるまでの秒数に340をかければ、雷までのメートル数。3秒なら約1キロメートル先です。
身近なところでは、打ち上げ花火も同じです。遠くから眺めていると、夜空に花が開いてから、ひと呼吸おいてドーンという音が届きます。
音の速さは気温で変わる
「1秒に340メートル」は、実はおおよその値です。音は空気の分子が次々と押し合って伝わる波なので、分子が活発に動く暖かい空気ほど速く進みます。乾いた空気中の音の速さは、0℃で毎秒約331メートル、20℃で約343メートル。気温が1℃上がるごとに、毎秒約0.6メートルずつ速くなります。
光の速さはほとんど変わらないので、同じ距離でも、冬より夏のほうが、光と音のずれはほんの少しだけ短くなる計算です。
ずれを使って音の速さを測った
光と音の時間差は、昔の科学者にとって音の速さを測る格好の道具でした。17世紀のフランスでは、修道士のマラン・メルセンヌらが、大砲を撃ったときの閃光から音が届くまでの時間を測ろうと試みています。
1709年には、イギリスの牧師ウィリアム・ダーラムが、自分の教会の塔の上から望遠鏡で遠くの銃の閃光を見張り、振り子で音が届くまでの時間を計りました。その結果は、毎秒約348メートルに相当します。
そして1738年、パリの科学アカデミーは、夜に大砲を撃って閃光と砲声の時間差を測る大がかりな実験を行い、風のないときの0℃での音の速さを毎秒332メートルと求めました。いまの値との差は1%もありません。雷と同じ「光ってから鳴るまで」の時間差が、音の正体を探る手がかりになったのです。
音の聞こえない稲妻
ところで、遠くの空で稲妻が光っているのに、いくら待っても音がしないことがあります。英語では「ヒート・ライトニング(熱の稲妻)」と呼ばれ、夏の暑さが生む、音のしない特別な雷だと思われることもありました。けれどもアメリカ国立気象局によれば、その正体は、音が届かないほど遠くにある、ふつうの雷雨の光です。
雷鳴が聞こえるのは、ふつう落雷から16キロメートルほどまで。音は進むにつれて広がって弱まり、空気に吸収されていきます。さらに、地上付近の空気は上空より暖かいことが多いため、音は進むうちに上向きに曲げられ、地上の人の頭上を通りすぎてしまいます。一方、稲妻の光は、条件がよければ100キロメートル以上離れた場所からも見えます。光だけが届いて音が届かないのは、このためです。