シャボン玉はなぜ虹色に見える?
膜の表と裏で反射した光が重なり、膜の厚さに応じて特定の色が強め合うからです。
ストローの先からふわりと飛び立つシャボン玉。よく見ると、表面には赤や緑、青や紫の模様が、流れるように動いています。けれども、もとの石けん水には色がついていません。絵の具も色素も入っていないのに、あの色はいったいどこから来るのでしょうか。
雨粒が光を色ごとに振り分ける虹とも、ガラスのプリズムとも違うしくみです。答えは、シャボン玉の膜の「薄さ」にあります。
髪の毛よりはるかに薄い膜
シャボン玉の膜は、石けんの分子にはさまれた、ごく薄い水の層でできています。その厚さは場所や時間によって変わりますが、多くは数百ナノメートルほど。1ナノメートルは100万分の1ミリメートルですから、髪の毛の太さの100分の1よりもさらに薄いことになります。
大切なのは、この厚さが、目に見える光の波長(およそ380〜780ナノメートル)と同じくらいだということです。光は波の性質をもっていて、それがはっきり顔を出すのが、ちょうどこのくらいの大きさの世界なのです。
2つの反射が重なると
光がシャボン玉に当たると、一部は膜の外側の面で反射し、一部は膜の中に入って内側の面で反射します。私たちの目には、この2つの反射光が重なって届きます。
内側で反射した光は、膜の中を往復するぶんだけ、長い道のりを進んできています。光は波なので、道のりの差によって、2つの波の山と山がそろえば強め合い、山と谷が重なれば打ち消し合います。これを光の「干渉」と呼びます。
太陽や電灯の白い光は、さまざまな色の光が混ざったものです。膜がある厚さのとき、ある色は強め合い、別の色は弱め合う。その結果、白い光の中から特定の色が浮かび上がって見えるのです。膜の厚さが変われば、強め合う色も変わります。見る角度によって色が変わるのも、光が膜の中を進む道のりが変わるためです。シャボン玉の色は、膜の厚さを描き出した地図のようなものなのです。
うずを巻く模様と、消える前の黒
シャボン玉の色が絶えず動いているのは、膜の中の液体が流れているからです。重力で液体は少しずつ下へ流れ落ちるため、上のほうの膜はだんだん薄くなっていきます。さらに空気の流れや水の蒸発によって膜の厚さはむらになり、色の模様がうずを巻くように変わっていきます。
膜がどんどん薄くなると、やがて色が消え、黒っぽく見える部分が現れます。膜が光の波長よりずっと薄くなると、外側の面と内側の面で反射した光がほとんど打ち消し合い、光がほとんど返ってこなくなるからです。外側の面で反射するときに、波の山と谷が入れ替わる性質があるため、道のりの差がほぼなくなると、ちょうど打ち消し合う関係になるのです。この黒い部分は、シャボン玉が割れる前ぶれでもあります。
ニュートンも見つめた色
薄い膜に現れる色は、昔から科学者たちの好奇心をくすぐってきました。万有引力の発見で知られるアイザック・ニュートンも、シャボン玉や薄い膜に現れる色の並び方を詳しく調べ、1704年に出版した著書『光学』で論じています。
水たまりに浮かんだ油の膜が虹色に光るのも、同じ薄い膜による光の干渉です。油そのものに色があるわけではなく、薄く広がった膜の厚さが、色を生み出しているのです。
この性質は、身近な道具にも生かされています。めがねやカメラのレンズの表面には、ごく薄い膜がコーティングされていることがあります。膜の表と裏で反射した光どうしを打ち消し合わせて、まぶしい照り返しを減らすしくみです。そうしたレンズを斜めから見ると、うっすら緑や紫に色づいて見えることがあります。