花火の色はどうやって出す?
火薬に混ぜた金属の化合物が、熱で元素ごとに決まった色の光を出します。赤はストロンチウム、緑はバリウムです。
ドーンという音とともに、夜空いっぱいに広がる光の花。赤から緑へ、緑から青へと色を変えながら消えていく打ち上げ花火は、日本の夏の風物詩です。
光に色をつけるといっても、フィルターをかけたり、色を塗ったりしているわけではありません。花火の色は、火薬に混ぜた金属が、燃えながら自分で出している光の色なのです。
色の正体は「炎色反応」
理科の授業で、金属をふくむ液体を炎に入れると炎の色が変わる実験を見たことがあるかもしれません。これを「炎色反応」といいます。
物質を強く熱すると、原子の中の電子がエネルギーを受け取って、ふだんより高いエネルギーの状態に上がります。その電子が元の状態に戻るとき、余ったエネルギーを光として放ちます。このとき出る光の色(波長)は元素ごとにほぼ決まっていて、ストロンチウムなら深い赤、ナトリウムなら黄色、カルシウムならオレンジ色、バリウムなら黄緑、銅なら青や青緑になります。
花火では、こうした金属の化合物を「炎色剤」として火薬に混ぜます。さらに、色をより深く鮮やかにするため、塩素をふくむ薬品を加えることもあります。炎の中で金属と塩素が結びついてできる小さな分子が、純度の高い赤や緑、青の光を出してくれるのです。
色を変える「星」のしかけ
打ち上げ花火の玉の中には、「星」と呼ばれる火薬の粒がぎっしりと並んでいます。空で玉が割れると、火のついた星が四方に飛び散り、ひとつひとつが光の点や筋になって、丸い花を描きます。
途中で色が変わる花火の秘密も、この星にあります。小さな火薬の粒に、別の色の火薬を何度も塗り重ねて乾かし、玉ねぎのような層をつくるのです。星は外側から順に燃えていくので、たとえば外側に赤、内側に緑の火薬を入れておけば、赤く光ったあとで緑に変わります。層を重ねては乾かす作業をくり返すため、大きな玉では、星を作るだけで3週間ほどかかることもあります。
いちばん難しいのは青
赤や緑に比べて、くっきりとした青を出すのは難しいといわれています。青い光を出すのは、銅と塩素が結びついた分子です。ところがこの分子は熱に弱く、炎の温度が高すぎると分解して、青く光る前に壊れてしまいます。
花火は高い温度で勢いよく燃えなければ、明るく光りません。かといって熱くしすぎると、青が消えてしまう。花火師たちは、このせまい温度の範囲に火薬の配合を合わせこむ工夫を重ねてきました。紫は、赤のストロンチウムと青の銅を組み合わせてつくります。
江戸の花火は橙色だった
日本でいちばん古い花火業者とされる江戸の「鍵屋」は、1659年に初代の弥兵衛が、おもちゃ花火を売り出したのが始まりと伝えられています。1808年にはその番頭がのれん分けをして「玉屋」を開き、隅田川の花火で両者が腕を競いました。いまも聞かれる「たまやー」「かぎやー」の掛け声は、この二つの屋号です。けれども、江戸時代の花火には、いまのような赤や緑、青はありませんでした。
当時の花火は、硝石・硫黄・木炭からなる黒色火薬を使った「和火(わび)」と呼ばれるもので、炭火のような橙色の濃淡だけで表現されていました。線香花火の火花の色を思い浮かべると、近いかもしれません。
変化が訪れたのは明治時代です。1879年から1887年にかけて、塩素酸カリウムや炭酸ストロンチウム、硝酸バリウム、アルミニウム、マグネシウムといった薬品が、海外から段階的に入ってきました。鮮やかな色と強い光を出せるこうした花火は「洋火(ようび)」と呼ばれます。日本煙火協会は、この時期を日本の花火の歴史上、最大の躍進の時期と位置づけています。