タグから探す

    道路に塩をまくとなぜ氷が溶ける?

    塩が溶けた水は0℃では凍れなくなるからです。食塩水は濃いと、マイナス21℃近くまで凍りません。

    -21℃

    濃い食塩水が凍り始める温度(約)

    雪の降った朝や、冷えこみの厳しい夜。道路や橋の上に、白い粒がまかれているのを見かけることがあります。多くは「凍結防止剤」と呼ばれる薬剤で、その正体は食塩と同じ塩化ナトリウムや、塩化カルシウムといった塩の仲間です。

    氷は0℃より暖かくならないと溶けないはず。なのに、マイナス何℃という寒さの中で、塩をまくと氷が溶けていきます。塩はいったい、何をしているのでしょうか。

    0℃の氷と水は、つねに出入りしている

    0℃の氷水の中では、氷の表面から水の分子が離れて水になる動きと、水の分子が氷にくっついて凍る動きが、同じ速さで起きています。出ていく分と入ってくる分がつり合っているので、見た目には何も変わりません。これが「0℃で凍る」「0℃で溶ける」ということの中身です。

    ここに塩を加えると、塩は水に溶けて、ナトリウムと塩素の小さな粒(イオン)に分かれます。このイオンが水の分子のあいだに入りこむと、水の分子が氷にくっつく動きがじゃまされます。一方、氷から水の分子が離れていく動きは変わりません。こうしてつり合いが崩れ、0℃でも、それより少し低い温度でも、氷は溶ける側に傾くのです。

    塩水が凍るには、0℃よりもっと低い温度まで冷える必要があります。この現象を「凝固点降下」といいます。海水が0℃では凍らず、約マイナス1.8℃まで冷えてようやく凍り始めるのも、このためです。

    雪の積もった住宅街の道路を、前に除雪板をつけ、荷台にオレンジ色の散布装置を積んだトラックが走っている
    大雪の翌朝、道路に塩などをまきながら走る散布車(イギリス・ワイト島、2010年12月)。出典: Editor5807 / CC BY 3.0 / Wikimedia Commons

    濃くするほど、凍りにくくなる

    塩水は濃いほど、凍り始める温度が下がります。国土技術政策総合研究所の資料によると、塩化ナトリウムの場合、濃度23.3%の食塩水で約マイナス21℃。これ以上は濃くしても下がらない、いわば限界の温度です。塩化カルシウムなら、約マイナス51℃まで下がります。

    もうひとつ面白いのは、塩水が一気にカチコチにはならないことです。たとえば10%の食塩水を冷やしていくと、マイナス7℃ほどで凍り始めますが、凍るのは真水の部分だけ。残った水はそのぶん塩が濃くなるので、さらに冷えないと凍りません。そのため路面は、全体が鏡のような氷になるのではなく、シャーベット状の部分が残りやすくなります。凍結防止剤がスリップ事故を減らせるのは、このおかげでもあります。

    寒すぎると効きにくい

    ただし、塩さえまけば安心というわけではありません。塩が働くには、まず塩が水に溶ける必要があります。気温が低いほど溶ける速さも氷を溶かす力も落ちるため、塩化ナトリウムは、極端に寒い日には効き目が鈍くなります。

    先ほどの資料には、1キログラムの凍結防止剤で溶かせる氷の量が示されています。マイナス3℃なら、塩化ナトリウムは6時間で約9.5キログラムの氷を溶かしますが、マイナス15℃では15分たっても0.1キログラムほど、6時間かけても2キログラムに届きません。同じ1キログラムの塩でも、寒さによって働きぶりがこれほど違うのです。

    歩道の脇に置かれたオレンジ色のかまぼこ形の箱。「ご自由にお使い下さい 凍結防止剤収納箱 国土交通省」と書かれている
    橋のたもとに置かれた、国土交通省の凍結防止剤の収納箱。凍りやすい場所で、誰でも使えるようになっています。出典: 円周率3パーセント / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons

    そこで、とくに冷えこみの厳しい場所や、すでに凍ってしまった路面には、塩化カルシウムが向いています。塩化カルシウムは水に溶けるときに熱を出し、その熱でも雪や氷を溶かすので、効き目が早いのが特徴です。一方、塩化ナトリウムは溶けるときに逆に熱を奪いますが、効果が長続きします。凍ってしまう前に予防としてまくのが、いちばん効率のよい使い方です。

    塩は便利な反面、車の下回りや橋の鉄筋をさびさせる原因にもなります。雪道を走ったあとに車の下を洗うよう勧められるのは、このためです。

    次はこちらをどうぞ

    1. 科学約4分氷はなぜ滑る?凍った道で足をとられた経験は、誰にでもあるはず。あまりに身近なこの現象の理由は、実は物理学者たちが170年以上も議論を続けている難問です。
    2. 科学約4分無重力でろうそくを灯すとどうなる?ろうそくの炎は、いつも上を向いてとがっています。では、上も下もない宇宙で火をつけたら、炎はどんな形になるのでしょうか。実際に宇宙で確かめた実験があります。
    3. 科学約4分ドライアイスの白い煙の正体は?ケーキの箱に入っていたドライアイスを水に入れると、白い煙がもくもく。いかにも「二酸化炭素の煙」に見えますが、本当にそうなのでしょうか。
    4. 科学約4分鉄の船はなぜ浮く?鉄くぎ1本は水に落とせばすぐに沈むのに、何万トンもの鉄でできた船は海に浮かびます。その差を生んでいるのは、鉄そのものではなく「形」でした。
    5. 科学約4分アルキメデスの「エウレカ」は本当?風呂で大発見をして、裸のまま街へ飛び出した天才。科学史でいちばん有名なこの逸話には、実はいくつもの疑問符がついています。
    6. 科学約4分氷はなぜ水に浮く?ほとんどの物質は、固まると自分の液体の中に沈みます。なのに、グラスの氷はぷかりと浮いたまま。水はどこが変わっているのでしょう。
    7. 科学約4分山の上ではなぜ低い温度で水が沸騰する?水は100℃で沸騰する。理科で習ったこの常識は、実は「いつでもどこでも」ではありません。高い山の上では、お湯の性格ががらりと変わります。
    8. 科学約4分0℃より冷たくても凍らない水がある?冷凍庫から出したペットボトルの水を軽くたたくと、目の前でみるみるシャーベットに。手品のようなこの現象には、水のちょっと意外な性質が隠れています。