道路に塩をまくとなぜ氷が溶ける?
塩が溶けた水は0℃では凍れなくなるからです。食塩水は濃いと、マイナス21℃近くまで凍りません。
-21℃
雪の降った朝や、冷えこみの厳しい夜。道路や橋の上に、白い粒がまかれているのを見かけることがあります。多くは「凍結防止剤」と呼ばれる薬剤で、その正体は食塩と同じ塩化ナトリウムや、塩化カルシウムといった塩の仲間です。
氷は0℃より暖かくならないと溶けないはず。なのに、マイナス何℃という寒さの中で、塩をまくと氷が溶けていきます。塩はいったい、何をしているのでしょうか。
0℃の氷と水は、つねに出入りしている
0℃の氷水の中では、氷の表面から水の分子が離れて水になる動きと、水の分子が氷にくっついて凍る動きが、同じ速さで起きています。出ていく分と入ってくる分がつり合っているので、見た目には何も変わりません。これが「0℃で凍る」「0℃で溶ける」ということの中身です。
ここに塩を加えると、塩は水に溶けて、ナトリウムと塩素の小さな粒(イオン)に分かれます。このイオンが水の分子のあいだに入りこむと、水の分子が氷にくっつく動きがじゃまされます。一方、氷から水の分子が離れていく動きは変わりません。こうしてつり合いが崩れ、0℃でも、それより少し低い温度でも、氷は溶ける側に傾くのです。
塩水が凍るには、0℃よりもっと低い温度まで冷える必要があります。この現象を「凝固点降下」といいます。海水が0℃では凍らず、約マイナス1.8℃まで冷えてようやく凍り始めるのも、このためです。
濃くするほど、凍りにくくなる
塩水は濃いほど、凍り始める温度が下がります。国土技術政策総合研究所の資料によると、塩化ナトリウムの場合、濃度23.3%の食塩水で約マイナス21℃。これ以上は濃くしても下がらない、いわば限界の温度です。塩化カルシウムなら、約マイナス51℃まで下がります。
もうひとつ面白いのは、塩水が一気にカチコチにはならないことです。たとえば10%の食塩水を冷やしていくと、マイナス7℃ほどで凍り始めますが、凍るのは真水の部分だけ。残った水はそのぶん塩が濃くなるので、さらに冷えないと凍りません。そのため路面は、全体が鏡のような氷になるのではなく、シャーベット状の部分が残りやすくなります。凍結防止剤がスリップ事故を減らせるのは、このおかげでもあります。
寒すぎると効きにくい
ただし、塩さえまけば安心というわけではありません。塩が働くには、まず塩が水に溶ける必要があります。気温が低いほど溶ける速さも氷を溶かす力も落ちるため、塩化ナトリウムは、極端に寒い日には効き目が鈍くなります。
先ほどの資料には、1キログラムの凍結防止剤で溶かせる氷の量が示されています。マイナス3℃なら、塩化ナトリウムは6時間で約9.5キログラムの氷を溶かしますが、マイナス15℃では15分たっても0.1キログラムほど、6時間かけても2キログラムに届きません。同じ1キログラムの塩でも、寒さによって働きぶりがこれほど違うのです。
そこで、とくに冷えこみの厳しい場所や、すでに凍ってしまった路面には、塩化カルシウムが向いています。塩化カルシウムは水に溶けるときに熱を出し、その熱でも雪や氷を溶かすので、効き目が早いのが特徴です。一方、塩化ナトリウムは溶けるときに逆に熱を奪いますが、効果が長続きします。凍ってしまう前に予防としてまくのが、いちばん効率のよい使い方です。
塩は便利な反面、車の下回りや橋の鉄筋をさびさせる原因にもなります。雪道を走ったあとに車の下を洗うよう勧められるのは、このためです。