ドライアイスの白い煙の正体は?
二酸化炭素ではなく、空気中の水蒸気が冷やされてできた小さな水や氷の粒です。二酸化炭素そのものは見えません。
ケーキやアイスクリームを買ったとき、保冷用に入れてもらうドライアイス。持ち帰ったあと、水を張ったコップに入れてみると、ぶくぶくと泡を立てながら白い煙があふれ出し、テーブルの上へ流れ落ちていきます。
ドライアイスは二酸化炭素を固めたものです。ですから、あの白い煙は二酸化炭素なのだろう、と考えるのは自然なことです。けれども実は、白く見えているものの正体は、二酸化炭素ではありません。
二酸化炭素は目に見えない
私たちが吐く息にも、二酸化炭素は約4%ふくまれています。けれども、ふだんの息が白く見えることはありません。空気中の二酸化炭素と同じように、二酸化炭素の気体は無色透明だからです。
ドライアイスは、マイナス78.5℃という非常に低い温度で、液体にならずに固体から直接気体に変わります。これを「昇華」といいます。このとき出てくる二酸化炭素の気体はとても冷たく、まわりの空気をぐっと冷やします。
空気には、目に見えない水蒸気がふくまれています。水蒸気は冷やされると、もう気体のままではいられなくなり、細かな水や氷の粒になります。この粒が光をはね返して、白く見えるのです。消費者庁も、ドライアイスのまわりに見える白煙は、温度が下がって空気中の水分が水や氷の粒になったものだと説明しています。冬の朝に吐く息が白くなったり、空に雲ができたりするのと、基本的には同じしくみです。
水に入れると煙が増えるわけ
ドライアイスをそのまま置いておくと、うっすらと白いもやが出る程度です。ところが水に入れると、とたんに煙の量が増えます。
水はドライアイスよりずっと温かいので、水に触れたドライアイスは勢いよく昇華し、冷たい二酸化炭素の泡が次々と生まれます。泡が水面ではじけると、水面近くの湿った空気が一気に冷やされ、大量の水の粒ができます。舞台やイベントで、床を雲のように白い霧がおおう演出には、この性質が利用されています。
もっとも、煙ができる細かなしくみについては、白い粒の一部は水の中で凍った氷の粉ではないかとする研究者もいて、細部まですべて解き明かされているわけではありません。ただ、白く見えているのが二酸化炭素の気体ではない、という点は変わりません。
煙が床をはうわけ
ドライアイスの白い煙は、湯気のように上へ立ちのぼらず、器の縁からあふれて下へ流れていきます。これは、二酸化炭素の気体が空気の約1.5倍の重さをもっているうえに、冷えた空気も重くなるからです。白い粒は、その重い流れに乗って運ばれているだけなのです。
やがて白い粒は、まわりの空気に温められて蒸発し、見えなくなります。けれども、それで二酸化炭素が消えたわけではありません。目に見えないまま、低い場所にたまり続けているのです。
見えない気体にご用心
1キログラムのドライアイスは、体積にすると約0.64リットル。これが昇華すると、約500リットルもの気体になります。ペットボトルやびんに入れてふたをすると、中の圧力が高まって容器が破裂するおそれがあります。
狭い場所にたまった二酸化炭素も危険です。消費者庁は2023年、葬儀の際に遺体を冷やすため棺に入れたドライアイスが原因とみられる、二酸化炭素中毒の死亡事故が報告されていると注意を呼びかけました。国民生活センターの実験では、ふたを閉めた棺の中の二酸化炭素の濃度が、20分後には、吸い込むとほとんど即時に意識を失うとされる30%を超えました。車の中や地下室など、風通しの悪い場所でドライアイスを扱うときは、換気を忘れないようにしましょう。