炭酸のシュワシュワの正体は?
水に押しこめられていた二酸化炭素が、圧力から解放されて泡になって出てくる姿です。
ペットボトルのふたをひねると、プシュッという音。コップに注げば、底や壁から細かな泡が次々に立ちのぼり、口に含むとシュワシュワと舌を刺激します。
炭酸飲料の泡の中身は、二酸化炭素です。でも、ふたを開けるまでは、泡はほとんど見えませんでした。二酸化炭素はそれまでどこに隠れていて、泡はどこで生まれるのでしょう。そして、あのピリッとした刺激の正体は何なのでしょうか。
圧力で押しこめられた気体
気体は、水のような液体に溶けることができます。溶ける量は、液体に接している気体の圧力が高いほど多くなります。これは「ヘンリーの法則」と呼ばれる性質です。
炭酸飲料は、二酸化炭素を高い圧力で水に溶かしこんでつくられます。容器を密閉しておけば中の圧力が保たれ、二酸化炭素は水に溶けたままです。ところがふたを開けると圧力が一気に下がり、水は溶かしていた二酸化炭素を抱えきれなくなります。行き場を失った二酸化炭素が、泡となって外へ出ていこうとするのです。プシュッという音は、容器の上の空間にたまっていた気体が、勢いよく飛び出す音です。
温度も大切です。気体は冷たい水ほどよく溶けるので、ぬるくなった炭酸飲料は、開けたとたんに泡があふれやすく、気も抜けやすくなります。
泡には「種」が必要
不思議なのは、ふたを開けても、飲み物のあちこちから泡がわき出すわけではないことです。よく見ると、泡はグラスの壁や底の決まった場所から、数珠つなぎになって生まれています。
実は、液体の中の何もないところで新しい泡をつくるのは、とても難しいことです。泡が育つには、きっかけになる小さな気体のたまり場が必要です。フランスのランス大学でシャンパンの泡を研究してきたジェラール・リジェ=ベレールさんらは、高速カメラを使った観察から、泡の多くが、グラスの壁にくっついたごく小さな繊維の中にとらわれた空気から生まれていることを明らかにしました。グラスをふいた布や空気中のほこりから付いた、セルロースの繊維です。
コーラにミントタブレットを入れると泡が噴き出すのも、表面の細かなでこぼこが、泡の種を大量に提供するためだと考えられています。
ピリッとくるのは「酸っぱさ」
炭酸を飲んだときのピリッとした刺激は、泡がはじける感触だと思われがちです。でも、どうやらそれだけではないようです。
二酸化炭素は水に溶けると、ごく一部が炭酸という弱い酸になります。2009年にアメリカの研究チームが発表したマウスの実験では、舌で酸味を感じる細胞の表面にある酵素が、二酸化炭素を素早く酸に変え、それが炭酸の「味」として感じられていることが示されました。さらに2013年には、気圧を高めて泡ができないようにした部屋で炭酸水を味わってもらっても、ピリピリ感の強さはほとんど変わらなかったという人の実験も報告されています。口の中の痛みや刺激を感じる神経も関わっていると考えられており、泡はむしろ、舌ざわりとして全体の感覚を盛り上げる役のようです。
ビール工場のとなりで生まれた炭酸水
人工的に炭酸水をつくる方法を広めたのは、イギリスの化学者ジョゼフ・プリーストリーです。1767年、イングランドのリーズでビール醸造所のそばに住んでいた彼は、発酵中のビールの上にたまる気体に興味をもち、そこに水の入った器をかざして、気体を水に溶かしこむことに成功しました。
プリーストリーは1772年、その方法を論文にまとめて発表します。のちに酸素を発見した一人としても知られることになる人物ですが、私たちの身近な炭酸飲料の歴史にも、しっかりと名前を残しているのです。