空気に重さはある?
あります。地上付近の空気は、1立方メートルあたり約1.2キログラムの重さがあります。
1.2kg
「空気のように軽い」という言い方があるように、私たちはふだん、空気に重さがあるとは感じていません。風船をふくらませても重くなった気はしませんし、部屋に空気が満ちていても、肩が重くなることはありません。
それでも、空気にはれっきとした重さがあります。しかも、身のまわりの空気を合わせると、思いのほか大きな数字になるのです。そのことを確かめるまでには、17世紀の科学者たちの、大胆でちょっと派手な実験がありました。
部屋の空気は何キロ?
海面と同じくらいの高さで、気温が20℃のとき、乾いた空気1立方メートルの重さはおよそ1.2キログラムです。水と比べれば800分の1ほどの軽さですが、決してゼロではありません。
たとえば、広さ約10平方メートル、天井の高さ2.4メートルほどの6畳間を考えてみましょう。部屋の体積は約24立方メートルですから、中の空気はおよそ29キログラム。小学校中学年の子ども1人分くらいの重さが、部屋の中にふわりと浮かんでいることになります。
ちなみに、湿った空気は乾いた空気より軽くなります。水蒸気の分子が、空気の主な成分である窒素や酸素の分子より軽いからです。
「空気の海の底」で暮らしている
空気の重さに初めてはっきりと迫ったのが、ガリレオの弟子だったイタリアの物理学者エヴァンジェリスタ・トリチェリです。
1643年、トリチェリたちは、水銀を満たしたガラス管を逆さにして、水銀の入った皿に立てました。すると管の中の水銀は少し下がり、皿の水銀面から約76センチの高さで止まったのです。管の上には、何もない空間ができていました。水銀の柱が落ちきらないのは、皿の水銀面をまわりの空気が重さで押しているからだ、とトリチェリは考えました。
1644年、トリチェリは友人への手紙にこう書いています。
私たちは、空気という元素の海の底に沈んで暮らしている。
山に登れば、空気は軽くなる
空気に重さがあるなら、高い場所ほど上にのっている空気は少なく、押す力も弱くなるはずです。この考えを確かめようとしたのが、フランスの哲学者・数学者ブレーズ・パスカルでした。
体の弱かったパスカルの代わりに、義理の兄フロラン・ペリエが、1648年9月19日、トリチェリと同じ水銀の管を持ってフランス中部のピュイ・ド・ドーム山(標高約1460メートル)に登りました。山頂で測ると、水銀の柱はふもとより8センチあまり低くなっていたのです。空気の重さは、上空に行くほど小さくなることが確かめられました。今、天気予報で耳にする気圧の単位「ヘクトパスカル」は、このパスカルの名にちなんでいます。
16頭の馬でも引き離せない
空気の力を、誰の目にもわかる形で見せつけたのが、ドイツの都市マクデブルクの市長も務めたオットー・フォン・ゲーリケです。
ゲーリケは、容器の中の空気を抜く真空ポンプを自ら作り、直径50〜60センチほどの銅の半球を2つ合わせて、中の空気を抜きました。すると、2つの半球はまわりの空気に押しつけられて、びくともしなくなったのです。1654年、ゲーリケはレーゲンスブルクで、神聖ローマ皇帝フェルディナント3世の前で真空の実験を披露しました。半球に馬をつないで左右から引かせる有名な実験では、片側8頭ずつ、計16頭の馬でもなかなか引き離せなかったと伝えられています。ただし、実験が行われた場所や馬の数については、資料によって違いがあります。
直径50センチの半球なら、空気が押しつける力は約2トンの重さに相当します。私たちの体にも、1平方センチメートルあたり約1キログラム、手のひらほどの面積なら100キログラムほどの空気の重さがかかっています。それでもつぶれないのは、体の内側からも同じ強さで押し返しているからです。