トマトとジャガイモは親戚?
どちらもナス科ナス属の仲間です。ジャガイモはトマトの祖先との交雑から生まれた、とする研究もあります。
900万年前
サラダに欠かせないトマトと、肉じゃがやフライドポテトでおなじみのジャガイモ。かたや枝に実る赤い果実、かたや土の中にできる芋で、台所での使われ方もまったく違います。
けれど、この2つは植物としてはとても近い間柄です。どちらも南米のアンデス地方がふるさとで、分類のうえでも同じグループに属しています。それどころか最近の研究では、ジャガイモという植物の誕生そのものに、トマトの祖先が深く関わっていたことがわかってきました。
同じナス科ナス属
トマトとジャガイモは、どちらもナス科の植物です。ナス科には約2,700もの種があり、ピーマンやトウガラシ、タバコ、ペチュニアなども含まれます。
その中でも、トマトとジャガイモはナスと同じ「ナス属」に分類されています。学名はトマトがソラヌム・リコペルシクム、ジャガイモがソラヌム・トゥベロスムで、どちらも「ソラヌム(ナス属)」で始まります。ナス属だけで1,200種以上がある大きなグループですが、その中でも2つは特に近い関係にあります。
近さは花を見るとよくわかります。ジャガイモの花は白や薄紫色、トマトの花は黄色と色こそ違いますが、星形に開いた花びらの中心に、黄色いおしべが筒のように寄り集まる形はそっくりです。
さらにジャガイモの株には、ときどき小さな青いトマトのような実がなります。ただしこの実には、ジャガイモの芽や緑色になった皮と同じくソラニンなどの有毒な成分が多く含まれていて、食べることはできません。
1本の株にトマトとジャガイモ
これほど近い仲間なので、トマトとジャガイモは接ぎ木ができます。ジャガイモの株の上にトマトの茎をつなぐと、地上ではトマトが実り、地下ではジャガイモが育つ、欲ばりな株ができあがります。
この組み合わせは少なくとも19世紀前半から試されてきました。2013年にはイギリスの園芸会社が、こうして育てた苗を「トムテイト(TomTato)」という名前で売り出し、話題になりました。また1978年には、ドイツの研究者らが2つの植物の細胞を融合させた雑種「ポマト」をつくりましたが、こちらは種を実らせることができず、実用には至りませんでした。
900万年前の「交雑」
2025年7月、中国農業科学院の黄三文(ホワン・サンウェン)さんや、ロンドン自然史博物館のサンドラ・ナップさんらの国際研究チームは、科学誌『セル』に驚きの論文を発表しました。ジャガイモのなかまは、トマトの祖先と、南米に生えるエチュベローサムという植物のグループとの交雑によって生まれた、というのです。
研究チームは、栽培されているジャガイモ450点と、野生のジャガイモのなかま56点のゲノム(全遺伝情報)を解析しました。その結果、ジャガイモのなかまはどれも、トマトの系統とエチュベローサムの系統の遺伝子を、安定した形で混ぜ合わせて持っていることがわかりました。2つの系統は約1,400万年前に分かれ、その後、約900万年前に自然に交わって、ジャガイモの祖先が誕生したと推定されています。
面白いのは、どちらの親も芋をつくれなかったことです。エチュベローサムは見た目こそジャガイモに似ていますが、地下に芋はできません。ところが交雑によって、芋づくりを始める「スイッチ」の役割をする遺伝子がトマト側から、芋になる地下の茎を伸ばす遺伝子がエチュベローサム側から持ち寄られ、組み合わさりました。こうして初めて、芋という新しい器官が生まれたと考えられています。
ちょうどそのころ、アンデス山脈は急速に高くなりつつありました。栄養を地下にたくわえる芋は、寒く厳しい環境を生きのびるのに役立ち、ジャガイモのなかまは山々に広がって、多くの種に分かれていったと研究チームは考えています。トマトの祖先は、ジャガイモの「親」のひとりだったともいえそうです。