世界一大きな花は?
1輪の花ならラフレシア・アルノルディイ。直径1メートル近く、重さ10キロほどになります。
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大きな花と聞いて思い浮かべるのは、ヒマワリや大輪のボタンでしょうか。それでも直径は、せいぜい数十センチです。ところが東南アジアの熱帯雨林には、その何倍もある花を咲かせる植物がいます。
名前はラフレシア・アルノルディイ。1輪の花としては世界最大とされ、直径は1メートル近く、重さは10キロほどにもなります。ただ、この植物の本当のすごさは、大きさよりもその暮らしぶりのほうにあるのかもしれません。
葉も茎も根もない植物
ラフレシアには、葉も茎も根もありません。光合成に欠かせない葉緑素もつくれないため、自分で栄養をつくることができないのです。では、どうやって生きているのか。答えは寄生です。
ラフレシアは、ブドウ科のテトラスティグマというつる植物の体内に、細い糸のような組織を張りめぐらせて暮らしています。水も栄養もすべて宿主からもらい、ふだんは外から姿がまったく見えません。私たちの目に触れるのは、宿主の根やつるの表面からつぼみが顔を出したときだけです。
つぼみは何か月もかけて、キャベツほどの大きさまでふくらみます。そしてある日、5枚の分厚い花びらを開くのです。
ハエを呼ぶための花
開いた花は、白い斑点が散った赤茶色。中央には大きな壺のようなくぼみがあります。そして、腐った肉のようだと形容される強烈なにおいを放ちます。
このにおいの相手は、動物の死骸に集まるハエの仲間です。ハエはごちそうがあると思って花にやってきますが、そこに肉はありません。かわりに花粉を体につけて、別の花へと運んでいきます。
ところが、ラフレシアの受粉はなかなか成功しません。多くの種では雄花と雌花が別々で、近くで同じ時期に両方が咲いていなければ実を結ばないからです。しかも、長い時間をかけて育ったつぼみが開いてから枯れるまでは、わずか1週間ほど。巨大な花は、とても危うい賭けの上に咲いているのです。
「もっと大きな花」の正体
ラフレシアより大きな花を見たことがある、という人もいるかもしれません。よく話題になるのが、同じスマトラ島に自生するショクダイオオコンニャクです。高さ3メートルに達することもある巨体で、こちらも腐った肉のようなにおいで虫を呼びます。
ただし、ショクダイオオコンニャクは1輪の花ではありません。花びらのように見える部分は苞(ほう)と呼ばれる葉の一種で、本物の花は中央の太い棒の根元に、小さなものがたくさん集まっています。こうした花の集まりを「花序」といい、ショクダイオオコンニャクは枝分かれしない花序として世界最大とされています。
ちなみに直径だけでいえば、2020年にスマトラ島西部で、近縁の別種のラフレシアが111センチに達したと報じられたこともあります。重さまで含めて「最大の花」の座にあるとされるのが、アルノルディイです。
小さな花の一族から生まれた巨人
葉も根もないラフレシアは、ほかの植物と比べる手がかりが少なく、植物の系統樹のどこに属するのか長く謎でした。2007年、遺伝子を解析した研究チームが、ラフレシアの仲間はトウダイグサ科から分かれたグループだと発表します。ポインセチアやキャッサバ、パラゴムノキの親戚にあたるのです。
トウダイグサ科の植物の多くは、ごく小さな花を咲かせます。研究では、ラフレシアの系統で花の直径がおよそ79倍にも大きくなったと推定されました。小さな花の一族から、植物界で最大の花が生まれたことになります。
その巨人は、いま危機に直面しています。2023年の報告では、知られている42種のラフレシアすべてが脅かされており、そのうち25種は絶滅寸前の状態にあるとされました。すみかの森が失われれば、宿主のつるとともに姿を消してしまうからです。