ひまわりは本当に太陽を追いかける?
追いかけるのは咲く前の若いうちだけ。花が開くと、ほぼ東を向いたまま動かなくなります。
5倍
ヒマワリは漢字で「向日葵」と書きます。英語ではサンフラワー、フランス語では「太陽のほうへ回る」という意味のトゥルヌソル。世界のあちこちで、この花は太陽と結びつけて名づけられてきました。
けれども、夏の盛りのヒマワリ畑を朝から夕方まで眺めていても、花が東から西へと首を振る様子はまず見られません。満開のヒマワリは、ほとんど動かないのです。では「太陽を追いかける」というのは、ただの思い込みなのでしょうか。
太陽を追うのは「つぼみの時代」
答えは、半分正解で半分まちがい、といったところです。太陽を追いかけるのは、花が咲く前の若いヒマワリです。
若いヒマワリの茎の先は、朝は東を向いていて、日中は太陽の動きに合わせて少しずつ西へ傾いていきます。そして夜のあいだに、また東へ戻るのです。翌朝、太陽が昇るころには、もう東を向いて待っています。
この首振りは、茎の伸び方の差によって生まれます。昼間は茎の東側がよく伸びるので頭が西へ傾き、夜は西側がよく伸びるので東へ戻る。2016年にアメリカのカリフォルニア大学デービス校などの研究チームが発表した研究で、このリズムに植物の体内時計が関わっていることが示されました。室内に移して真上から動かない光を当てても、ヒマワリは数日のあいだ東西への首振りを続けたのです。太陽に引っぱられているだけでなく、夜明けの方角を先回りして待つ、時計仕掛けの動きだったわけです。
花が開くと、東を向いて止まる
ところが、茎の伸びが落ち着いてくると、この首振りはだんだん小さくなっていきます。そして花が開くころには、ほとんど動かなくなります。そのとき花が向いているのは、多くの場合、東の方角です。
満開のヒマワリは太陽を追いかけず、朝日の昇る方角を向いたまま夏を過ごします。 畑の花がそろって同じ方向を向いているのは、一本一本がこうして東を向いて止まった結果なのです。
東を向くと、虫がよく来る
では、なぜわざわざ東を向くのでしょうか。同じ研究チームは、この疑問を確かめる実験もしています。
鉢植えのヒマワリの向きを変えて、一部の花を西に向けたのです。赤外線カメラで調べると、東向きの花は朝日を浴びて早く温まり、西向きの花に比べて約5倍もの花粉を運ぶ虫が訪れていました。さらに、西向きの花を朝のうちにヒーターで温めてやると、訪れる虫が増えたといいます。
ハチなどの昆虫は、朝の冷えた空気の中では体が温まるまで活発に動けません。いち早く温まる東向きの花は、そんな虫たちにとって魅力的な場所なのでしょう。若いうちは太陽を追って育ち、花を咲かせたら東を向いて虫を待つ。ヒマワリの動きには、成長の段階ごとに違う意味があるようです。
太陽を「見る」しくみは、まだ謎
植物が光のほうへ曲がる性質は、窓辺の観葉植物でもおなじみです。この現象では、青い光を感じるフォトトロピンという受容体が中心的な役割を果たすことがわかっています。
ところが2023年、同じ研究グループが屋外で太陽を追うヒマワリを調べたところ、このおなじみのしくみがはたらいている様子は見られませんでした。青い光や紫外線、赤い光などをそれぞれ遮っても、首振りは止まらなかったのです。複数の光の感知経路が関わっていると考えられていますが、決め手となる遺伝子はまだ見つかっていません。毎年夏に見慣れたあの花の動きにも、解き明かされていない謎が残っているのです。