サッカーはなぜ90分?
1866年の試合で取り決めた90分が広まり、1897年に正式なルールになりました。
1866年
前半45分、ハーフタイムをはさんで後半45分。プロの試合でも、週末の草サッカーでも、大人のサッカーの試合時間は90分が基本です。ラグビーは80分、バスケットボールは国際ルールで40分と、競技によって長さはまちまちですが、サッカーの90分は世界中どこへ行っても変わりません。
では、この90分という長さは、いつ、どうやって決まったのでしょうか。記録をさかのぼると、ルールブックに書かれるよりずっと前に、ある一つの試合で取り決められた時間にたどり着きます。
ルールに「時間」がなかった
現代サッカーの出発点とされるのは、1863年にロンドンでフットボール・アソシエーション(FA)が結成され、統一ルールがつくられたことです。ところが、この初期のルールには、試合を何分行うかという決まりがありませんでした。試合の長さは、そのつど対戦する者どうしで取り決めるものだったのです。
そんななか、1866年3月31日、ロンドンのバタシー・パークで、ロンドンとシェフィールドの選抜チームによる一戦が行われました。シェフィールドはイングランド北部の工業都市で、独自のルールでフットボールを楽しんでいた土地です。この試合はFAのルールで行われることになり、FA側が示した条件のなかに、「試合は午後3時から4時30分までの90分間とする」という一文がありました。
当時のルールにはハーフタイムの規定もなく、雨と雹が降ったりやんだりするなかでの試合だったと記録されています。結果はロンドンの勝利でした。なぜ60分でも120分でもなく90分だったのか、その理由を書き残した記録は見つかっていません。
30年後、ようやく条文に
この試合をきっかけに、90分という長さはしだいに広く使われるようになっていきます。それでも、ルールの条文として書き込まれるまでには、さらに30年以上かかりました。
1886年には、イングランド、スコットランド、ウェールズ、アイルランドのサッカー協会が集まり、ルールを管理する国際サッカー評議会(IFAB)が生まれます。そのIFABが1897年に改めたルールで、初めて「試合時間は、双方の合意がない限り90分とする」と定められました。同じ改正では、ハーフタイムの休憩を「5分を超えてはならない」とする決まりも加わっています。
いまのルールでは、ハーフタイムは「15分を超えてはならない」とされています。休憩の長さは時代とともに変わりましたが、試合そのものの90分は、19世紀の取り決めがそのまま受け継がれているのです。
失われた時間を取り戻す
90分が決まると、次に問題になったのは「止まっている時間」の扱いです。
1891年のルールで、審判は「時間を計る係」も務めることになりました。その年、ストークとアストン・ヴィラの試合で、こんな出来事があったと伝えられています。0対1で負けていたストークが、終了2分前にペナルティキックを得ました。ところが、アストン・ヴィラのゴールキーパーがボールを場外へ大きく蹴り出してしまい、ボールを取りに行っているあいだに90分が過ぎて、試合は終わってしまったというのです。
こうした事態を受けて、ルールは少しずつ改められていきます。1890年代前半には、必要ならペナルティキックを蹴り終えるまで試合時間を延長するという決まりが加わりました。さらに1898年には、審判が「浪費された時間を追加する」権限が明記されます。これが、いまでいうアディショナルタイムの始まりです。
日本では長いあいだ「ロスタイム」と呼ばれてきましたが、これは和製英語です。日本サッカー協会は2010年、正式な用語を「アディショナルタイム」に改めました。2022年のワールドカップ・カタール大会以降は、ビデオ判定の確認やゴール後の喜びの時間なども厳密に加えられるようになり、後半に10分を超える時間が追加される場面も珍しくなくなっています。