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    野球ボールの縫い目はいくつ?

    硬式球の縫い目は108個。大リーグの公式球は、いまも手縫いで作られています。

    108個

    硬式野球ボールの縫い目(ステッチ)の数

    白い革の上を、赤い糸の縫い目が大きなカーブを描いてぐるりと走る。野球のボールは、ひと目でそれとわかる独特の姿をしています。テレビ中継でも球場でも何度となく見ているはずですが、あの縫い目がいくつあるのか、数えたことはあるでしょうか。

    答えは108個です。日本人なら、大みそかに鳴らす除夜の鐘や「煩悩の数」を思い出す数字かもしれません。野球ボールには、なんと煩悩と同じ数の縫い目がある。偶然とはいえ、ちょっと出来すぎた話です。

    レモンの皮から8の字へ

    野球が形を整えつつあった19世紀半ばのアメリカでは、ボールは手作りで、作り手によって大きさも重さもばらばらでした。よく使われたのが、のちに「レモンピール(レモンの皮)型」と呼ばれるボールです。1枚の革を花びらのような形に切り、芯を包むように縫い合わせたもので、縫い目がボールの上に4本の線を描いていました。

    1枚の茶色い革で芯を包んで縫い合わせた、レモンピール型の古い野球ボール
    ミズーリ歴史協会が所蔵する、「レモンピール型」と呼ばれる初期の野球ボール。出典: Missouri Historical Society / Public domain / Wikimedia Commons

    やがて、ひょうたんのような形に裁った2枚の革を組み合わせる、現在の「8の字」型の縫い方が広まります。考案者については諸説あり、靴職人の息子エリス・ドレイクが発明したという説もあれば、ウィリアム・カトラーという人物が考え、それをウィリアム・ハーウッドが買い取ったという説もあります。いずれにしても、ハーウッドが1858年ごろにマサチューセッツ州に工場を構え、この形のボールを量産したことが普及のきっかけになったとされています。

    2枚の革の境目には、ボールをぐるりと一周する1本の長い縫い目ができます。途切れることのない、なめらかな曲線です。この縫い目に沿って並ぶ、V字形の糸のかがり目を数えると、108個になるのです。

    いまも職人の手縫い

    意外なことに、大リーグの公式ルールには「縫い目を108個にせよ」とは書かれていません。ルールが定めているのは、コルクやゴムの芯に糸を巻き、2枚の白い革で覆ってしっかり縫い合わせること、そして重さと周囲の長さの範囲です。108という数は、ボールの大きさと、ほどよい縫い目の間隔から定まってきたものと考えられています。

    驚くのは、その縫い方です。大リーグの公式球は、いまも中米コスタリカの工場で、職人がひとつひとつ手で縫い上げています。機械化も試みられてきましたが、手縫いの品質には及ばなかったといわれます。革の素材も時代とともに変わり、かつては馬の革が使われていましたが、馬革の不足から、大リーグでは1974年に牛の革へ切り替えられました。

    日本のプロ野球や高校野球で使われる硬式球も、縫い目は一般に108個です。煩悩と同じ数になったのは、あくまで偶然の一致とされています。

    縫い目が、ボールを曲げる

    縫い目は、ボールをまとめるためだけのものではありません。ピッチャーにとっては、投球を操るための大切な手がかりです。

    赤い糸のV字形の縫い目が並ぶ、白い野球ボール
    白い革を赤い糸で縫い合わせた野球ボール。V字形のかがり目が、1本の曲線に沿って並んでいます。出典: Tage Olsin / CC BY-SA 2.0 / Wikimedia Commons

    回転しながら飛ぶボールの表面では、盛り上がった縫い目が空気の流れを乱します。どの向きに縫い目をそろえて投げるかによって、1回転するあいだに空気を切る縫い目の本数が変わり、ボールの伸びや曲がり方に違いが出るのです。速球の握りに「フォーシーム」「ツーシーム」という名前があるのは、まさにこの縫い目の本数のことを指しています。

    108個の縫い目は、ボールを形づくると同時に、投手の指先の言葉にもなっています。

    指先の感覚で縫い目をとらえ、わずかな角度の違いで球筋を変える。変化球の多彩さは、あの赤い糸がなければ生まれなかったかもしれません。

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