カーリングのストーンはどこの石?
オリンピックで使うストーンは、スコットランド沖の無人島「アルサ・クレイグ」でとれた花こう岩でできています。
19.96kg
氷の上を静かにすべっていく丸い石と、その前を必死にブラシでこする選手たち。カーリングは、冬のオリンピックのたびに日本でも大きな注目を集める競技です。
あのストーンは、プラスチックや金属ではなく、本物の石でできています。しかも、オリンピックで使われるストーンの石は、世界でたった1か所、スコットランドの沖に浮かぶ小さな無人島からやってくるのです。
重さ約20キロの花こう岩
世界カーリング連盟の規定では、ストーンの重さは17.24〜19.96キロ、周囲は91.4センチ以内、高さは11.4センチ以上と決められています。材料は、硬くて緻密な花こう岩です。
底は平らに見えますが、実はくぼんでいて、氷に触れているのは直径13センチほどの輪の部分だけです。幅わずか6〜13ミリほどのこの輪が、氷の上をすべっていきます。
海に浮かぶ「石の島」
その花こう岩の産地が、スコットランド南西部の沖合、クライド湾の入り口に浮かぶアルサ・クレイグ島です。本土から西へ約16キロ、面積は約99ヘクタール、高さ338メートルほどのお椀を伏せたような形の島で、大昔の火山の活動でできた岩のかたまりです。
いまは人が住んでおらず、カツオドリの仲間のシロカツオドリが大きな群れをつくる、野鳥の保護区になっています。北アイルランドのベルファストとスコットランドのグラスゴーのほぼ中間にあることから、「パディーズ・マイルストーン(パディの道しるべ)」というあだ名もあります。
2004年の時点で、世界で使われているカーリングのストーンの60〜70%が、この島の石でつくられていたといわれます。
2種類の石を組み合わせる
アルサ・クレイグの花こう岩には種類があり、ストーンには2種類が使い分けられています。本体に使われるのは、ぶつかっても欠けにくい「コモン・グリーン」。そして氷に触れる底の部分には、「ブルー・ホーン」という石がはめ込まれます。ブルー・ホーンは水をほとんど吸わないので、氷がとけて再び凍ることをくり返しても、石が傷みにくいのです。
この島で石を採る権利を独占しているのが、1851年創業のスコットランドの会社「ケイズ・オブ・スコットランド」です。1924年の第1回冬季オリンピックから、2002年の大会を除くすべての大会にストーンを納めてきて、2006年からはオリンピックのストーンを独占しています。ちなみに、カーリングが冬季オリンピックの正式競技として定着したのは、1998年の長野大会からです。
島での採石は、毎年行われるわけではありません。2013年には11年ぶりに約2000トンの石が切り出され、ストーン約1万個分になると見込まれました。その後、2020年の冬にも採石が行われています。1個のストーンを仕上げるには、およそ6時間かかるといいます。ケイズがつくるストーンは年に1800〜2000個ほどで、最大のお得意先はカーリングが盛んなカナダです。かつてはこの島から「レッド・ホーン」という赤みのある石も採れましたが、いまでは掘り尽くされてしまいました。
もうひとつの産地、ウェールズ
ストーンの石の産地は、アルサ・クレイグだけではありません。イギリス・ウェールズ北部のトレヴォルにある採石場の花こう岩も、カーリングのストーンに使われています。こちらの石は、カナダのカーリング・ストーン会社が1992年からストーンづくりに使っているものです。
それでも、オリンピックの舞台に立つのはアルサ・クレイグの石だけ。海に浮かぶ小さな島が、世界のカーリングを足もとから支えているのです。