太陽系でいちばん高い山は?
火星のオリンポス山が最有力です。高さはエベレストの約2.5倍。小惑星ベスタの山も肩を並べます。
21〜22km
地球でいちばん高い山、エベレストの標高は8848メートルあまり。人間にとっては、酸素ボンベなしでは登頂も難しい、まさに世界の屋根です。
けれども、太陽系に目を広げると話は変わります。お隣の惑星、火星には、エベレストを2つ重ねてもまだ届かない、とてつもない山がそびえているのです。
エベレスト2.5個ぶんの火山
その山の名前は、オリンポス山。ギリシア神話の神々が住む山にちなんだ名前です。
火星には海がないため、「海抜」で高さを測ることができません。そこで、火星全体の平均的な高さをもとにした「基準面」から測ると、オリンポス山の高さは約21〜22キロメートル。エベレストのおよそ2.5倍です。しかも、すぐまわりの平原は基準面より低いところにあるため、ふもとの平原から山頂までの高低差は、最大で26キロメートル近くになります。
大きいのは高さだけではありません。裾野の直径は約600キロメートル、面積はおよそ30万平方キロメートルと、日本の本州よりも広い範囲を一つの山が占めています。山頂には、いくつもの火口が重なり合ってできた、長さ80キロメートル、深さ最大3キロメートルあまりの巨大なくぼみがあります。山の外周は、高いところで8キロメートルにもなる崖に囲まれています。
登っても「山」に見えない山
これほど高い山なのに、斜面はとてもなだらかです。平均の傾きはわずか5%ほどで、ハワイの火山と同じ「盾状火山」と呼ばれるタイプです。溶岩が何度も流れ出して積み重なり、伏せた盾のような形になりました。
あまりに大きく、なだらかなので、もし山の上に立ったとしても、火星の丸みのせいで山全体を見渡すことはできないとされています。登山者の目には、どこまでもゆるやかな坂道が続いているようにしか見えないかもしれません。
なぜ火星の山はこんなに大きいのか
地球にも盾状火山はありますが、オリンポス山ほどの大きさにはなりません。その違いを生んでいる理由の一つが、プレートの動きです。
地球の表面は、プレートと呼ばれる何枚もの岩盤に分かれて、ゆっくり動いています。ハワイの島々は、地下から湧き上がるマグマの上を太平洋プレートが移動していくため、火山が次々に場所を変えて、島が列のように並びました。ところが火星には、地球のように動くプレートがありません。地面が同じ場所にとどまったまま、真下から長い時間をかけて溶岩が供給され続けたため、一つの火山がひたすら大きく育ったと考えられています。
さらに、火星の重力は地球の約38%しかありません。重力が弱いぶん、山が高く積み上がっても、自分の重みでつぶれたり沈み込んだりしにくいのです。雨や川による浸食がほとんどないことも、巨大な姿が保たれてきた理由の一つです。
小惑星に潜むライバル
では、オリンポス山が文句なしの太陽系一かというと、実はライバルがいます。火星と木星のあいだを回る小惑星ベスタの南極にある、レアシルビアと呼ばれる巨大なクレーターです。
ベスタの直径は約570キロメートルしかありませんが、レアシルビアの直径は約500キロメートル。小惑星そのものの直径の9割近い、とてつもない衝突の跡です。そしてその中央には、衝突の反動で盛り上がった山があります。高さは、ふもとから測って約20〜25キロメートルと見積もられています。
つまり、オリンポス山とほぼ同じくらいの高さです。どこを山のふもととするか、何を基準に測るかによって数字が変わるため、どちらが太陽系一高いかは、測り方次第というのが正直なところです。それでも、地球の最高峰が太陽系ではかなり控えめな存在だということは、間違いなさそうです。