木星の大赤斑は小さくなっている?
はい。19世紀には地球3個が並ぶほどの幅でしたが、今は地球1個ぶんあまりに縮んでいます。
太陽系最大の惑星、木星。望遠鏡をのぞくと、しま模様の表面に、赤っぽい楕円形の模様がぽつんと浮かんでいるのが見えます。これが「大赤斑(だいせきはん)」です。
その正体は、木星の大気に生まれた巨大な渦、いわば嵐です。地球の台風は長くても数週間で消えてしまいますが、大赤斑は少なくとも200年近くにわたって吹き荒れ続けています。ところがこの長寿の嵐が、少しずつ小さくなっていることがわかってきました。
地球より大きな嵐
大赤斑は、木星の南半球にある高気圧の渦です。縁のあたりでは、時速400キロメートルを超える風が吹いているとされます。渦の上端の雲は、まわりの雲より8キロメートルほど高く盛り上がっています。
驚かされるのは、その深さです。2016年から木星を回っている NASA の探査機ジュノーの観測によって、大赤斑は木星の大気の中へ、数百キロメートルもの深さまで根を伸ばしていることが明らかになりました。NASAによれば、地球の海の深さの50〜100倍にもあたる規模です。
赤い色の原因は、実はまだはっきりしていません。太陽の紫外線を浴びて大気中の物質が化学変化を起こし、赤みのある物質ができているのではないか、という説などが考えられています。
いつから吹いているのか
大赤斑の歴史をたどると、17世紀にさかのぼります。1665年、イタリア出身の天文学者ジョヴァンニ・カッシーニが、木星に大きな斑点を見つけました。この斑点は「永続斑」と呼ばれ、1713年まで観測の記録が残っています。
ただし、その後100年以上にわたって、斑点の記録はほとんど途絶えます。そして1831年から、ふたたび大きな赤い斑点がはっきりと記録されるようになりました。これが今の大赤斑です。カッシーニの斑点と今の大赤斑は同じものなのか、長いあいだ議論がありましたが、2024年に発表された研究は、古い記録を詳しく分析したうえで、両者は別の嵐だった可能性が高いと結論づけています。今の大赤斑は、1830年ごろに生まれたのかもしれません。
1879年ごろ、大赤斑は天文ファンのあいだで一躍有名になります。上の絵からもわかるように、当時の大赤斑は、今よりずっと横長で大きなものでした。
地球3個ぶんから1個ぶんへ
NASA のまとめによると、19世紀後半の観測では、大赤斑の長い方の幅はおよそ4万1000キロメートルと見積もられていました。地球の直径は約1万2700キロメートルですから、地球が3つ並んでもまだ余るほどの大きさです。
それが1979年、探査機ボイジャーが木星に接近したときには、約2万3300キロメートルになっていました。さらにハッブル宇宙望遠鏡による測定では、1995年に約2万1000キロメートル、2009年に約1万8000キロメートル、2014年には約1万6500キロメートル。2012年ごろからは、アマチュア天文家の観測で、1年に900キロメートル以上という速いペースで縮んでいることも報告されました。2017年の時点で、幅は地球の直径の約1.3倍です。
縮むにつれて、形も変わってきました。かつての細長い楕円は、だんだんと円に近づいています。このままのペースが続けば、2040年ごろにはほぼ円形になるという見方もあります。
では、大赤斑はいずれ消えてしまうのでしょうか。縮んでいる理由もふくめて、はっきりしたことはまだわかっていません。ある大きさで落ち着くのか、それとも消えていくのか。いま私たちは、太陽系でいちばん有名な嵐の変化を、リアルタイムで見届けているところなのです。