1日が1年より長い惑星があるって本当?
答え
本当です。金星は1回自転するのに約243日かかり、1年(約225日)より長いのです。
243日
「1日」と「1年」。私たちの暮らしでは、1年は1日の365倍ほど長いのが当たり前です。ところが太陽系には、この大小関係がひっくり返っている惑星があります。地球のすぐ内側を回る、金星です。
明けの明星、宵の明星として親しまれてきたこの星は、大きさも重さも地球とよく似ていることから「地球の双子」と呼ばれることもあります。けれども、その時間の流れ方は、双子とは思えないほど風変わりです。
回るのが、とにかく遅い
金星が太陽の周りを1周する公転周期は、約225日。地球の1年より少し短い「1年」です。
一方、金星がこまのように1回転する自転周期は、約243日。つまり金星では、自分の軸で1回まわるより先に、太陽の周りを1周し終えてしまいます。「1日が1年より長い」と言われるのはこのためです。
自転の遅さは、地球にたとえるとよくわかります。地球の赤道上の地面は、時速1600キロを超える速さで動いています。金星の赤道では、それが時速6キロ台。人がのんびり歩くのとそう変わりません。
太陽は西から昇る
金星にはもうひとつ、大きな特徴があります。自転の向きが、ほかの多くの惑星と逆なのです。
太陽系の惑星はほとんどが、太陽の周りを回るのと同じ向きに自転しています。ところが金星は、反対向きにゆっくりと回っています。その結果、金星の地表に立てたとしたら、太陽は西の空から昇り、東の空へ沈むことになります。
ここで少しややこしいのが、「1日」の数え方です。243日というのは、星々を基準にして1回転する時間のこと。太陽が昇ってから次に昇るまでの、いわば生活感覚の1日は、自転と公転の組み合わせで決まります。金星では自転と公転が逆向きなので、両者の効果が足し合わされて太陽が空を進むペースが少し速まり、日の出から次の日の出までは約117日になります。それでも、金星の1年のうちに日の出はわずか2回ほどしか訪れません。
なぜ逆向きに回っているのか
金星がなぜこれほどゆっくり、しかも逆向きに回っているのか。実は、はっきりした答えはまだ出ていません。
よく挙げられる説のひとつは、太陽系ができて間もないころ、大きな天体が衝突して自転が大きく変えられたというものです。もうひとつは、金星の分厚い大気が関わっているという考え方です。金星の大気は地表で地球の約90倍もの圧力があり、太陽の熱や潮の力を受けて、長い時間をかけて自転にブレーキをかけたり、向きを変えたりしてきたのではないかというのです。複数の要因が重なった可能性もあり、研究が続いています。
大気といえば、金星の空ではもうひとつ不思議なことが起きています。地表はこれほどゆっくり回っているのに、上空の大気は約4日で金星をひと回りするほどの猛烈な速さで流れているのです。「スーパーローテーション」と呼ばれるこの現象は、日本の金星探査機「あかつき」の観測テーマのひとつにもなりました。
雲の下で回る時計
金星の自転周期がわかったのは、意外に新しく、1960年代のことです。金星は厚い雲に覆われていて、望遠鏡で地表の模様を追うことができません。そこで地球から電波を送り、雲を突き抜けて地表で跳ね返ってきた信号を調べることで、ようやく自転の速さと向きが明らかになりました。
その後の探査機の観測では、測るたびに自転周期が数分ほど食い違うこともわかっています。分厚い大気とのやりとりによって、自転の速さそのものがわずかに揺らいでいるのかもしれません。243日という数字は、雲の下で回る、少し気まぐれな時計の目盛りなのです。