太陽にいちばん近い恒星は?
ケンタウルス座のプロキシマ・ケンタウリです。距離は約4.24光年あります。
4.24光年
地球にいちばん近い恒星は何か、と聞かれたら、正解は太陽です。太陽も、夜空に光る星々と同じく、自ら燃えて輝く恒星のひとつだからです。では、太陽を除いたとき、私たちにいちばん近い恒星はどれでしょうか。
夜空でひときわ明るいシリウスや、七夕でおなじみのベガを思い浮かべるかもしれません。ところが答えは、明るい星の中にはありません。太陽のお隣さんは、望遠鏡を使わなければ見ることのできない、小さく暗い星なのです。
お隣さんは、肉眼では見えない星
太陽にいちばん近い恒星は、南天のケンタウルス座にあるプロキシマ・ケンタウリです。「プロキシマ」はラテン語で「最も近い」という意味。距離は約4.24光年、つまり光の速さで進んでも4年あまりかかります。今夜この星の光を見たとしたら、それは4年ほど前にこの星を出発した光ということになります。
この星を見つけたのは、南アフリカで観測していたスコットランド出身の天文学者ロバート・イネスで、1915年のことでした。発見が20世紀まで遅れたのは、とにかく暗いからです。明るさは11等級ほどで、肉眼で見える限界である6等級よりはるかに暗く、双眼鏡でも簡単には見つかりません。
プロキシマ・ケンタウリは「赤色矮星(せきしょくわいせい)」と呼ばれるタイプの星です。直径は太陽のおよそ7分の1、質量は太陽の約12パーセントしかありません。表面温度も太陽の半分ほどしかなく、赤っぽく鈍く光っています。近くにあっても見えないのは、星そのものが小さく、弱々しいからなのです。
じつは3つの星の家族
プロキシマ・ケンタウリは、ひとりぼっちの星ではありません。少し離れたところに、ケンタウルス座アルファ星のA星とB星という、2つの明るい星があります。こちらは太陽によく似た星どうしのペアで、約80年かけて互いのまわりを回っています。
このA星とB星までの距離は、約4.3光年。プロキシマ・ケンタウリよりわずかに遠いだけです。2つの光が重なって見えるケンタウルス座アルファ星は、シリウス、カノープスに次いで夜空で3番目に明るい恒星として知られています。
プロキシマ・ケンタウリは、このペアから約1万3000天文単位(太陽と地球の距離の1万3000倍)も離れた場所を、約55万年という気の遠くなるような周期で回っていると考えられています。3つの星は重力で結びついた、ひとつの家族なのです。
残念ながら、ケンタウルス座アルファ星は南の空の低いところにあるため、北緯29度より北では地平線の上に昇ってきません。日本では、沖縄など南の地域で地平線すれすれに見えるかどうかという星です。
探査機ボイジャーなら何年かかる?
4.24光年とは、どれくらいの距離なのでしょう。1光年は約9兆4600億キロメートルなので、4.24光年は約40兆キロメートルになります。
これを、人類がつくった物体の中でも特に遠くまで旅をしている探査機ボイジャー1号の速さで考えてみましょう。1977年に打ち上げられたボイジャー1号は、現在、太陽に対して秒速約17キロメートルで進んでいます。時速にすると約6万キロメートル。地上ではとてつもない速さです。
それでも、この速さでプロキシマ・ケンタウリまで行こうとすると、およそ7万5000年もかかる計算になります。人類が文字を使い始めてから現在までの、10倍を超える時間です。ちなみにボイジャー1号はプロキシマ・ケンタウリの方向に進んでいるわけではないので、実際にこの星を訪ねることはありません。時速320キロメートルの新幹線で向かうとしたら、およそ1400万年。いちばん近い恒星でさえ、それほど遠いのです。