太陽の光は地球まで何分かかる?
平均で約8分19秒。地球と太陽の距離が変わるため、時期によって十数秒の差があります。
8.3分
晴れた日に空を見上げると、そこには太陽が輝いています。けれども、私たちが目にしているのは「いまの太陽」ではありません。太陽を出発した光が地球に届くまでには、平均でおよそ8分19秒かかります。つまり私たちは、いつも8分ほど前の太陽を見ていることになります。
光は1秒間に約30万キロメートル、地球を7周半するほどの速さで進みます。宇宙でいちばん速いこの光をもってしても、8分あまり。太陽と地球のあいだには、それほどの距離が横たわっているのです。
1億5000万キロを、光の速さで割ると
計算そのものは、意外なほど単純です。地球と太陽の平均距離は約1億4960万キロメートル。天文学ではこの距離を「1天文単位」と呼び、宇宙のものさしの基準にしています。これを光の速さ、秒速約29万9792キロメートルで割ると、約499秒。分に直すと8分19秒になります。
ただし、地球の軌道はきれいな円ではなく、わずかにつぶれた楕円です。太陽にいちばん近づく1月初めごろには距離が約1億4710万キロメートルまで縮まり、光は約8分11秒で届きます。逆にいちばん遠ざかる7月初めごろには約1億5210万キロメートルとなり、約8分27秒。北半球の夏のほうが、光の到着がやや遅いというのは、少し意外かもしれません。季節の暑さ寒さを決めているのは太陽までの距離ではなく、地軸の傾きなのです。
光に「速さ」があると見抜いた人
光は一瞬で届くのではなく、有限の速さで進む。このことを最初に示したのは、17世紀のデンマークの天文学者オーレ・レーマーだとされています。
当時の天文学者たちは、木星の衛星イオが木星の影に隠れる「食」の時刻を熱心に観測していました。イオは規則正しく木星を回るので、食の時刻はきっちり予測できるはずです。ところがレーマーは、地球が木星から遠ざかる時期には食が予測より遅れ、近づく時期には早まることに気づきました。
レーマーはこれを、光が地球まで旅をする時間の差だと考えました。地球が木星から遠い位置にあるほど、光はそのぶん長い道のりを進まなければならず、到着が遅れるというわけです。彼の見積もりでは、光が地球の軌道の直径を横切るのに約22分かかるとされました。実際の値は約17分なので誤差はありますが、「光にも速さがある」ことを天体の動きから見抜いた発想は見事なものでした。
太陽の中では、何万年も足止め
ところで、8分19秒というのは、あくまで太陽の表面を出てからの旅の時間です。光のもとになるエネルギーが生まれるのは、太陽の中心にある「核」。そこでは約1500万度という高温と高い圧力のもとで水素の原子核が融合してヘリウムになり、莫大なエネルギーが解き放たれています。
ところが、中心で生まれた光は、まっすぐ外へ出ることができません。太陽の内部にはガスがぎっしり詰まっていて、光はほんのわずか進んでは吸収されたり、向きを変えられたりします。まるで人混みをかき分けるように、行ったり来たりを延々と繰り返すのです。さらに表面に近い層では、煮え立つ鍋のようなガスの流れに乗って、エネルギーが外へ運ばれていきます。
こうしてエネルギーが中心から表面にたどり着くまでには、数万年から十数万年かかると見積もられています。前提とするモデルによって数字には大きな幅があり、決定版の値はありません。それでも、今日の日差しのもとになったエネルギーが、人類の祖先が石器を手に暮らしていたころに太陽の中心で生まれたものだというのは確かなようです。最後の8分あまりは、長い旅のほんの仕上げにすぎません。
もし太陽が突然消えたら
光が届くまでに8分かかるということは、もし太陽がいま突然消えたとしても、私たちは8分あまりのあいだ、何も気づかずに日差しを浴び続けることになります。
では、地球を引っぱっている重力はどうでしょうか。太陽が消えた瞬間に、地球は軌道を外れて飛んでいってしまうのでしょうか。アインシュタインの一般相対性理論によれば、重力の変化もまた、光と同じ速さで伝わります。2017年には、約1億3000万光年かなたで中性子星どうしが合体した際に生まれた重力波とガンマ線が、わずか2秒ほどの差で地球に届きました。これによって、重力の伝わる速さが光の速さとほぼ等しいことが、きわめて高い精度で確かめられています。
太陽が消えたという知らせは、光としても重力としても、8分あまり遅れて同時に届くのです。
もちろん現実の太陽は、この先も数十億年にわたって輝き続けると考えられています。安心して、8分前の日差しを楽しみましょう。