電子レンジはなぜ食べ物を温められる?
1秒に約24億5000万回ふるえる電磁波が水の分子を揺さぶり、そのもみ合いが熱に変わるからです。
2.45GHz
冷めたご飯を入れてボタンを押すと、数分で湯気が立ちのぼります。コンロやオーブンのように、熱い炎や空気から熱を伝えているわけではありません。温め終わったお皿が、中の料理ほど熱くなっていないことも珍しくありません。
電子レンジは、外から熱を加えるのではなく、食べ物の中で熱を「生み出して」いるのです。その主役は、食べ物に含まれる水でした。
正体は「マイクロ波」
電子レンジが使うのは、マイクロ波と呼ばれる電磁波です。電磁波とは、電気と磁気の振動が波となって伝わるもので、光や携帯電話の電波の仲間です。家庭用の電子レンジでは、1秒間に約24億5000万回振動する、周波数2.45ギガヘルツのマイクロ波が使われています。波長はおよそ12センチメートルです。
このマイクロ波をつくり出すのが、マグネトロンという真空管の一種です。もともとは第二次世界大戦のころ、レーダーのために改良が進められた部品でした。1945年ごろ、アメリカのレイセオン社の技術者パーシー・スペンサーが、マグネトロンのそばでポケットのお菓子が溶けているのに気づいたことが、電子レンジ誕生のきっかけになったと伝えられています。
水の分子を振り回す
水の分子は、酸素の側がわずかにマイナス、水素の側がわずかにプラスの電気を帯びています。そのため、電気の力がかかると、プラスとマイナスの向きをそろえようとして回転します。
マイクロ波の中では、この電気の力の向きが1秒に何十億回も入れ替わります。水の分子はそのたびに向きを変えさせられますが、周りの分子とひしめき合っているので、すんなりとは回れません。押し合い、ぶつかり合いながら、少し遅れてついていくのが精一杯です。このもみ合いのなかで、電磁波のエネルギーが分子のでたらめな動き、つまり熱へと変わっていきます。こうした温め方は「誘電加熱」と呼ばれます。
食べ物の中の水分そのものが熱源になるので、表面から熱が伝わるのを待つ必要がありません。これが、電子レンジが短い時間で料理を温められる理由です。
「水の共鳴」はよくある誤解
電子レンジの説明として、「2.45ギガヘルツは水の分子が共鳴する周波数だから、水だけがよく温まる」という話を聞いたことがあるかもしれません。でも、これは正確ではありません。
液体の水がマイクロ波を最もよく吸収するのは、室温ではおよそ20ギガヘルツ前後の、もっと高い周波数です。もしその周波数を使ったら、エネルギーは食べ物の表面でほとんど吸収されてしまい、中まで届かないでしょう。2.45ギガヘルツは、ほどよく吸収されながら、食べ物の内側まである程度しみこめる周波数なのです。しみこむ深さは食品によって違いますが、数センチメートル程度とされます。
また、この周波数帯は、通信以外の産業や医療などに使うために国際的に割り当てられていて、無線通信のじゃまになりにくいという事情もありました。
凍ったものが苦手なわけ
冷凍食品を温めたら、外側は熱いのに中心がまだ凍っていた、という経験はないでしょうか。これにも、水の分子の動きやすさが関係しています。
氷の中では、水の分子が結晶にがっちりと組みこまれていて、自由に向きを変えられません。そのため、氷は液体の水に比べてマイクロ波をあまり吸収しないのです。先に溶けた部分ばかりがどんどん温まり、まだ凍っている部分との差が広がってしまいます。解凍モードが出力を弱めて時間をかけるのは、溶けた部分から熱がじわじわと伝わるのを待つためです。
ちなみに、陶器やガラスの器があまり熱くならないのは、これらがマイクロ波をあまり吸収しないからです。ただし、熱くなった料理から熱が伝わるので、取り出すときはやはり注意が必要です。