野球はなぜ9回まで?
1857年の会議で決まりました。それまでは先に21点取れば勝ち。なぜ「9」かの理由は記録に残っていません。
1857年
サッカーは前後半の90分、ラグビーは80分。多くの球技は、時計で試合の長さを決めています。ところが野球には制限時間がありません。どんなに長引いても、短く終わっても、試合は「9回」で区切られます。
プロ野球でも甲子園でも、メジャーリーグでも同じ9回。この数字はいったい、いつ、誰が決めたのでしょうか。
先に21点取ったほうが勝ち
近代野球のルールの出発点とされるのが、1845年にアメリカ・ニューヨークの「ニッカーボッカー・ベースボール・クラブ」がまとめた規則です。そこには、試合の長さについてこう書かれていました。試合は21点(当時は「エース」と呼びました)を先に取ったほうの勝ち。ただし、両チームが同じ回数だけ攻撃を終えなければならない、と。
つまり当時の野球には「何回まで」という決まりがなく、どちらかが21点に届くまで試合が続いたのです。
この方式には困った点がありました。打撃戦になればすぐに終わりますが、投手が踏ん張ると、いつまでたっても決着がつきません。日が暮れて試合が打ち切られることもありました。1856年に行われた55試合のうち、5試合に1試合近くが引き分けに終わったといいます。ニッカーボッカーとエンパイアというクラブの試合では、8回を終えて21対21となり、そのまま引き分けになりました。
1857年、ニューヨークの会議
そこで1857年、ニューヨーク周辺の野球クラブが集まり、ルールを統一するための会議が開かれました。1月の最初の会合には14のクラブが3人ずつ代表を送り、ニッカーボッカーの会長だったダニエル・「ドク」・アダムズが議長に選ばれます。
ニッカーボッカーが用意したルール案では、試合は7回まででした。ところが2月の会合で、修正案が出されます。提案したのは、なんとニッカーボッカーの代表のひとり、ルイス・ワズワースでした。7回ではなく9回に。この修正案が採用され、野球の試合は9回までと決まったのです。
この会議では、塁間を90フィート(約27.4メートル)とすること、1チームを9人とすること、雨や日没で打ち切られても5回まで終わっていれば試合が成立することなども決められました。いまの野球の骨組みの多くは、この会議でできあがったといえます。
なぜ「9」だったのか
では、なぜ9回だったのでしょうか。意外なことに、会議で7回派と9回派がどんな理由を述べたのかは、記録に残っていません。
当時すでに、正式な試合は9人対9人で戦うのがふつうになっていました。ワズワースは、7人制・7回制という案に対して、9人・9回を主張したと伝えられています。「9人だから9回」とそろえたのではないかとも考えられますが、はっきりした根拠があるわけではありません。
9回は変わるのか
170年近く守られてきた9回ですが、見直す動きもあります。メジャーリーグでは、新型コロナウイルスの流行で日程が詰まった2020年と2021年、ダブルヘッダーの試合を7回までに短くしました。2022年からは、もとの9回に戻っています。日本のプロ野球でも2021年には、感染対策で試合時間を短くするため、延長戦を行わずに9回で打ち切る特別ルールがとられました。
日本の高校野球でも、7イニング制が議論されています。暑さによる熱中症の危険や、投手の肩やひじを守ることが主な理由です。日本高校野球連盟の検討会議は2025年12月、2028年春から全ての公式戦で7イニング制を採用することが望ましいとする最終報告書をまとめました。一方で、現場には「9回を戦わせてあげたい」という声も根強く、議論はいまも続いています。