バオバブの幹には水がたまっている?
幹は空っぽの水がめではなく、水分をたっぷり含んだスポンジのような材そのものに水をたくわえています。
79%
アフリカやマダガスカルの乾いた大地に、ビール瓶のようにずんぐりした幹の木が立っています。バオバブです。てっぺんにだけ短い枝を広げたその姿は、まるで木を逆さまにして、根っこを空に向けて植えたかのようです。
この太い幹には水がたっぷりたまっている、という話を聞いたことがある人もいるでしょう。たしかにバオバブは「水をためる木」として有名です。ただ、その中身は、私たちが想像するような水がめとは少し違っています。
逆さまに植えられた木
バオバブはアオイ科バオバブ属の木で、8種が知られています。そのうち6種はマダガスカルだけに生え、1種はアフリカ大陸からアラビア半島にかけて、もう1種はオーストラリアに分布しています。
アフリカのバオバブは、乾季になると葉をすっかり落とし、8か月ほども葉のない姿で過ごします。枝だけになった樹冠は、いよいよ根のように見えます。そのため「逆さまの木」とも呼ばれ、神様が怒って逆さまに植えてしまった、といった言い伝えが各地に残っているといわれます。
幹の中はスポンジのよう
では、幹の中はどうなっているのでしょうか。よく誤解されるのですが、バオバブの幹は、中が空洞になっていて水がたまっているわけではありません。水をたくわえているのは、幹をつくっている木材そのものです。
アメリカのハーバード大学の研究チームは、マダガスカルに生える6種のバオバブの材を詳しく調べ、2006年に報告しました。それによると、材に含まれる水分は最大で79%。木材の密度は1立方センチあたり0.09〜0.17グラムと、ふつうの木よりはるかに低く、材の69〜88%が「柔細胞」という水をためやすい柔らかい細胞でできていました。バオバブの幹は、水を吸ったスポンジのような材でできているのです。
大きな木では、10万リットルを超える水をたくわえるといわれることもありますが、見積もりには大きな幅があります。雨の量に合わせて幹の太さが変わることも知られていて、幹が水をためていることは確かだと考えられています。
ためた水は何に使う?
ところが、ためた水の使い道を調べてみると、意外なことがわかってきました。
同じ研究チームは、マダガスカルの3種のバオバブで、乾季の水の使われ方を測定しました。乾季の終わり、雨が降り始める前にバオバブは新しい葉を広げますが、このとき根から水を吸い上げる流れはほとんどありませんでした。新しい葉は、ほぼ幹にたくわえた水だけで育てられていたのです。この時期、幹の水分は最大で12%減っていました。
一方で、葉の気孔を大きく開いて盛んに光合成をするのは、まとまった雨が降ってからでした。ためた水は、日照りのあいだ光合成を続けるためというより、雨季のスタートダッシュに備えて葉を準備するために使われていたわけです。
さらに研究チームは、水には体を支える役目もあると考えています。バオバブの材は、水分が減るほど硬さが落ちて、たわみやすくなることがわかりました。水を使いすぎれば、巨体を支えられなくなるおそれがあるのです。バオバブの水は、飲み水であると同時に、骨組みの一部でもあるのかもしれません。
本当の空洞は別の理由で
それでも、中に大きな空洞をもつバオバブが実際にあるのも事実です。アフリカの古いバオバブには、複数の幹が輪のように合わさって育ち、その内側にすき間ができたものがあると考えられています。ナミビアのある古木は、空洞に35人ほどが入れるほどで、礼拝堂や郵便局として使われたこともあるそうです。
バオバブはとても長生きで、ジンバブエにあった「パンケ」と呼ばれる木は、2011年に枯れたとき約2450歳だったと推定されています。ただ、21世紀に入ってから、アフリカで最も古く大きなバオバブが次々と枯れていることが報告されていて、干ばつや気温の上昇が関係している可能性が指摘されています。