バナナは木じゃないって本当?
答え
本当です。バナナは巨大な「草」で、幹に見える部分は葉が重なったものです。
15m
南国の農園の写真を思い浮かべてみてください。人の背丈の倍ほどもある太い幹から大きな葉が広がり、その下に青いバナナの房が重たげに下がっている。どう見ても立派な「木」です。
ところが植物学の目で見ると、バナナは木ではありません。あれは、とてつもなく大きく育つ「草」なのです。
幹に見えるのは、葉の束
木と草を分けるいちばんの目安は、幹が硬い木質になって、年々太りながら何年も生き続けるかどうかです。バナナの「幹」を切ってみると、中はみずみずしく、木材のような硬い部分はありません。
切り口をよく見ると、薄い層が何重にも巻き重なっているのがわかります。これは葉のつけ根にある「葉鞘(ようしょう)」という部分が、筒のように重なり合ってできたものです。茎のように見えて茎ではないため、この部分は「偽茎(ぎけい)」と呼ばれます。
では本当の茎はどこにあるのかというと、地面の下です。バナナの茎は地下で短く太い塊になっていて、そこから葉が次々と上へ伸びていきます。古い葉は外側へ押しやられ、新しい葉が中心から現れる。その繰り返しで、偽茎は太く高くなっていきます。
一度実をつけたら、世代交代
やがて地下の茎から花をつける茎が伸び、偽茎の中心を通り抜けててっぺんから顔を出します。その先に花が咲き、実がなっていくのです。
実を収穫したあと、その偽茎は役目を終えて枯れていきます。何十年も実をつけ続ける果樹とは、ここが大きく違うところです。けれど、それで終わりではありません。地下の茎からは子株が次々と芽を出し、新しい偽茎が育って、また実をつけます。農園では、この子株を植え替えることでバナナを増やしています。
ちなみに、バナナの仲間には驚くほど大きくなるものもあります。ニューギニアの山地に生えるムサ・インゲンスという野生種は、偽茎だけで15メートルほど、葉を含めると20メートルに達するとされ、世界最大の草本植物といわれています。
バナナは「ベリー」、イチゴは違う
もうひとつの意外な事実は、実のほうにあります。植物学では、バナナの実は「ベリー(液果)」に分類されます。
ここでいうベリーとは、ひとつの花の1つの子房から育ち、果皮全体が厚く柔らかい果肉になった実のこと。この定義に当てはめると、バナナのほかにトマトやブドウ、キウイフルーツ、そしてスイカまでもがベリーの仲間に入ります。
反対に、名前に「ベリー」とついているイチゴ(ストロベリー)は、植物学上のベリーではありません。私たちが食べている赤い部分は、実ではなく、花の土台にあたる「花托(かたく)」がふくらんだものです。表面のつぶつぶこそが本当の実で、ひとつひとつの中に種が入っています。
ところで、バナナを輪切りにすると中心に黒い小さな点が並んでいます。あれは種になりきれなかった名残です。私たちがふだん食べている品種は、種ができない性質をもつ株が選び出され、受け継がれてきたもの。野生のバナナの実には、硬くて大きな種がぎっしり詰まっていて、とても食べやすいとはいえません。
種ができない以上、栽培用のバナナは先ほどの子株を植えて増やすしかありません。そのため、世界中で輸出されているバナナの多くは「キャベンディッシュ」という品種で、遺伝的にはほぼ同じ株のコピーです。味や形がそろう反面、ひとつの病気が広がると一斉に被害を受けやすいという弱点も抱えています。実際、かつて主流だった別の品種は、20世紀半ばに病気の流行で大きな打撃を受け、キャベンディッシュに主役の座を譲りました。