ファスナーはいつ生まれた?
1893年にアメリカのジャドソンが原型を発表し、1910年代にサンドバックが今の形に仕上げました。
1893年
上着の前を閉めるとき、かばんを開けるとき、私たちは1日に何度もファスナーを動かしています。小さなつまみを引くだけで、左右の歯がぴたりとかみ合う。考えてみれば、なかなか不思議な仕組みです。
この便利な道具は、ある日ひらめいて完成したものではありません。原型が生まれてから、いまの形にたどり着くまでには、20年以上の年月がかかりました。
ブーツを楽に履くための発明
ファスナーに似たアイデアは、19世紀半ばからありました。1851年には、ミシンの発明で知られるアメリカのエリアス・ハウが、衣服の留め具の特許を取っています。ただし、ハウはこれを本格的に売り出すことはありませんでした。
原型と呼べるものを作ったのは、シカゴの技術者ホイットコム・ジャドソンです。当時のブーツは、たくさんの留め具を一つずつ留めなければならず、履くのにひと苦労でした。ジャドソンはこれを一気に留める装置を考え、「クラスプ・ロッカー」と名づけます。1893年8月29日に特許を取得し、同じ年のシカゴ万国博覧会で披露しました。
ところが、この装置はほとんど売れませんでした。仕組みが複雑で、途中で外れてしまうことも多かったといわれます。
完成させたのはスウェーデン生まれの技師
この発明を引き継いで改良したのが、スウェーデン生まれの技師ギデオン・サンドバックです。1906年にジャドソンの関わる会社に入った彼は、留め具の形を根本から見直しました。
サンドバックは、小さな歯の片面にくぼみ、反対の面に出っぱりをつけ、隣り合う歯どうしががっちりかみ合う形にしました。さらに、1インチ(約2.5センチ)あたりの歯の数を4つから10〜11個に増やし、外れにくくしたのです。改良したファスナーは1913年に発売され、1917年には「分離可能な留め具」として特許を取得しました。いま私たちが使っているファスナーの基本は、このときに完成したといえます。
「ジッパー」は長靴の名前だった
それでも、すぐに洋服に使われたわけではありません。名前が広まるきっかけになったのは、ゴム長靴でした。
1923年、アメリカのタイヤメーカーB.F.グッドリッチが、サンドバック式のファスナーを使ったゴム製の長靴を売り出します。開け閉めするときの「ジップ」という音にちなんで、この長靴は「ジッパー」と名づけられました。そのうちに、留め具そのものもジッパーと呼ばれるようになったのです。「ジッパー」はグッドリッチの登録商標でもありました。
1930年代になると、子どもが自分で服を着られる便利な留め具として、子ども服にも使われはじめます。ズボンの前開きでも、ボタンとの「戦い」がありました。1937年ごろ、フランスのデザイナーたちが取り入れたこともあって、ファスナーはボタンに勝ち、男性用ズボンにも広まっていきました。
日本では「チャック」
日本では、ファスナーを「チャック」と呼ぶ人も少なくありません。この呼び名は、1927年ごろ、広島県の向島(現在の尾道市)で作られたファスナーが、「巾着(きんちゃく)」をもじった「チャック印」という商標で売られたことに由来するとされています。
その日本で生まれたのが、世界最大のファスナーメーカーYKKです。1934年に吉田忠雄が東京で創業した会社で、戦後はアメリカから機械を輸入して生産を一気に広げました。いまでは金額ベースで世界のファスナーの約45%を占めるとされています。