カメは甲羅から出られる?
出られません。甲羅は背骨や肋骨と一体になった体の一部で、脱ぐことはできないのです。
50〜60個
アニメや漫画では、カメが甲羅をすっぽり脱いで、裸のまま慌てて走り回る場面がよく描かれます。甲羅はまるで、ヤドカリの貝殻や、脱いだり着たりできるよろいのようです。
けれども本物のカメは、どんなに困っても甲羅から抜け出すことはできません。甲羅は、カメの体の骨そのものだからです。
甲羅は骨でできている
カメの甲羅は、背中側の「背甲」と、おなか側の「腹甲」からできていて、両者は体の横で橋のようにつながっています。大切な内臓は、この箱の中にすっぽりと収まっています。
背甲の土台になっているのは、なんと背骨と肋骨です。ほかの動物ならかごのように胴体を囲むはずの肋骨が、カメでは平たく広がって、皮膚の中にできる骨の板と一体化しています。甲羅全体はおよそ50〜60個の骨が組み合わさってできていて、甲羅を脱ぐことは、背骨と肋骨を体から抜き取るのと同じことなのです。
甲羅の表面を覆っているのは、鱗板(りんばん)と呼ばれる板です。こちらは骨ではなく、私たちの爪と同じケラチンというたんぱく質でできています。甲羅には神経や血管も通っていて、触られたり押されたりすれば、カメはちゃんと感じます。
肩甲骨が肋骨の内側にある
カメの体には、もうひとつ奇妙な特徴があります。肩甲骨が、肋骨の内側に入っているのです。人間を含むほかの四本足の動物では、肩甲骨は肋骨の外側にあります。カメは、この並び順が逆転した唯一のグループです。
なぜこんなことが起きるのか。理化学研究所の倉谷滋さんらの研究チームは、カメの胚が育っていく様子を詳しく調べました。ほかの動物では、肋骨は背中側からおなか側へと伸びていきます。ところがカメの肋骨は背中側にとどまり、そこから扇のように外へ広がっていきます。その過程で体の壁が折りたたまれるように変形し、肋骨が肩甲骨の上にかぶさる形になる、というのです。
肋骨ががっちり固まっているので、カメは私たちのように胸をふくらませて呼吸することもできません。代わりに、おなかの筋肉を使って内臓を押したり引いたりし、肺に空気を出し入れしています。
甲羅はどうやって生まれたか
では、この不思議な甲羅は、どのように進化してきたのでしょうか。手がかりは化石にあります。
南アフリカで見つかった約2億6000万年前の爬虫類ユーノトサウルスは、甲羅こそないものの、肋骨が幅広く平たくなっていました。2016年の研究では、この幅広い肋骨は身を守るためではなく、前足で地面を掘るときに体を安定させる土台だったのではないか、という説が出されています。ドイツの約2億4000万年前の地層から見つかったパッポケリスも、幅広い肋骨をもつ、甲羅の「下書き」のような体つきでした。
中国で見つかった約2億2000万年前のオドントケリスは、おなか側の腹甲は完成していたのに、背中側の甲羅はまだ不完全でした。そして三畳紀の終わりごろのプロガノケリスになると、背中もおなかも完全な甲羅で覆われています。カメの甲羅は、ある日突然できあがったのではなく、何千万年もかけて少しずつ形づくられてきたと考えられています。
ちなみに、甲羅への首のしまい方には2通りあります。日本のイシガメやクサガメなど多くのカメは、首を縦にS字に曲げて甲羅の中へ引きこみます。一方、南米やアフリカ、オーストラリアなどにすむヨコクビガメの仲間は、首を横に折りたたんで甲羅のへりに沿わせます。ウミガメは、首を甲羅の中に完全には引きこめません。