キリンは1日に何時間眠る?
動物園では1日4〜5時間ほど。ただし首を丸める深い眠りは、合計十数分ほどしかありません。
「キリンは1日に20分しか眠らない」。そんな話を、雑学の本やテレビで見聞きしたことがある人もいるでしょう。背の高い体で、いつも周りを見張っているキリンには、たしかにそんなイメージがよく似合います。
けれど実際の研究をたどってみると、話はもう少し複雑です。キリンの睡眠時間は、「どこからを眠りと数えるか」、そして「動物園か野生か」によって、数分にも数時間にもなるのです。
立ったまま、うとうと
キリンの眠りを詳しく調べた古典的な研究として、1996年にスイスの研究者が発表したものがあります。動物園で暮らすキリン8頭の夜の様子を、152夜にわたってビデオで記録したのです。
その結果、大人のキリンの睡眠時間は1日平均約4.6時間でした。思ったより長いと感じるかもしれません。ただし、その多くは立ったまま、あるいは脚をたたんで座り、首を立てたまま、うとうとと浅く眠る時間です。キリンは夜を中心に、短い眠りを何度も繰り返します。昼過ぎにも、ちょっとした昼寝をとっていました。
人間のようにまとめて数時間ぐっすり眠るのではなく、細切れの眠りを積み重ねる。これがキリンの眠り方の基本です。
首をくるりと曲げる「深い眠り」
キリンの眠りでいちばん印象的なのは、地面に座り込み、長い首を後ろへぐるりと曲げて、頭を自分のお尻や後ろ脚の上にのせる姿勢です。ちょうど首で大きな輪をつくるような格好になります。
この姿勢のとき、キリンは夢を見ると考えられている「逆説睡眠(レム睡眠)」に入っているとみられています。体の力が抜ける深い眠りなので、首を支えていられず、体に預けてしまうのでしょう。
ところが、この深い眠りはとても短いのです。先ほどの動物園の研究では、逆説睡眠は全体の睡眠時間のわずか4.7%ほど。計算すると、1日にせいぜい十数分ということになります。「キリンはほとんど眠らない」という話は、おそらくこの深い眠りの短さが強調されて広まったものでしょう。
野生のキリンはどう眠る?
では、ライオンなどの肉食獣がいる野生ではどうでしょうか。長いあいだ、野生のキリンの夜の行動はほとんどわかっていませんでした。暗闇の中で、遠くから眠りを観察するのは難しいからです。
2023年には、アフリカ南部のナミビアで、3頭のキリンの角に加速度計をつけ、頭の動きから夜の過ごし方を調べた研究が発表されました。それによると、首を曲げる深い眠りの姿勢は1晩に平均2回ほど、合計で約9分。夜のあいだ動かずに休んでいる時間は8時間ほどあったものの、深い眠りはごく短く、日没後と夜明け前の2回に分かれて現れる傾向がありました。
ただし、対象はわずか3頭です。頭の動きだけで眠りを見分ける方法では、立ったままの浅い眠りまでは数えきれていない可能性もあります。野生のキリンの「睡眠時間」は、まだはっきりとは決まっていないのです。
長く眠れない理由
キリンが深く眠る時間を短くしているのには、それなりの理由があると考えられています。
ひとつは、立ち上がるのに時間がかかることです。長い脚と首をもつキリンが座った姿勢から立つには、首を振って反動をつけるなど、いくつかの動作が必要です。首を体にのせて眠っている最中に襲われたら、逃げ遅れてしまうかもしれません。
もうひとつは、食事に長い時間がかかることです。キリンの主食である木の葉は、量のわりに栄養が多くありません。大きな体を保つには、1日の多くを食べることに費やす必要があります。
大型の草食動物には、短い睡眠で暮らすものが少なくありません。2017年に発表された研究では、野生のアフリカゾウの睡眠時間が1日平均わずか2時間ほどと報告されています。大きな体と、眠りの短さには、何らかの関係があるのかもしれません。