世界一高い滝は?
陸上ではベネズエラのエンジェルフォール。落差は約979メートルあります。
979m
南米ベネズエラの奥地、熱帯のジャングルの中に、切り立った崖に囲まれた台形の山々がそびえています。その一つの頂から、白い糸のような水の流れが、はるか下の森へと落ちていきます。現在知られている中で世界一高い滝、エンジェルフォールです。
落差は約979メートル。高さ634メートルの東京スカイツリーを縦に1本半並べても、まだ届きません。
テーブルマウンテンから落ちる水
エンジェルフォールがあるのは、ベネズエラ南東部のカナイマ国立公園です。この一帯には、周囲を垂直の崖に囲まれ、頂上が平らなテーブル状の山がいくつも点在しています。現地の言葉で「テプイ」と呼ばれる山々です。
滝は、そのうちの一つアウヤンテプイの頂上近くから流れ落ちています。全体の落差979メートルのうち、途中でどこにもぶつからずに一気に落ちる部分だけでも約807メートル。あまりに高いため、乾季には水が地面に届く前に霧となって散ってしまうこともあるといわれます。
飛行士の名前をもつ滝
「エンジェル」という名前は、天使ではなく人の名前に由来します。1933年にこの滝の上空を飛んだアメリカの飛行士、ジミー・エンジェルです。彼は1937年、滝の上のテプイに飛行機で着陸を試みましたが、機体は湿地にはまって動かなくなってしまいました。
滝の高さが正式に測られたのは、1949年のことです。アメリカのジャーナリスト、ルース・ロバートソンが組織した探検隊が滝の真下までたどり着き、測量を行いました。
もちろん、この滝は外の世界に「発見」されるずっと前から、地元の先住民ペモンの人々に知られていました。ペモンの言葉では「ケレパクパイ・メルー」と呼ばれ、「最も深い場所の滝」という意味だとされます。2009年には、当時のチャベス大統領がこの先住民の呼び名を使うべきだと提案したこともありました。
海の底には、もっと大きな「滝」がある
ところが、「滝」の意味を少し広げると、エンジェルフォールをはるかに上回る候補が現れます。グリーンランドとアイスランドのあいだにあるデンマーク海峡の、海の底を流れる「滝」です。
北の海で冷やされた海水は、重く沈みやすくなります。この冷たく重い水が、海峡の海底の高まりを乗り越えて、南側のより暖かい海水の下へと潜り込むように、海底の斜面を流れ下っていくのです。その落差は約3500メートルともいわれ、エンジェルフォールの3倍以上。運ぶ水の量は毎秒300万立方メートル以上と見積もられ、アマゾン川が海へ注ぐ量の10倍を超えます。
もっとも、この「滝」は崖から水が落ちるわけではなく、長い距離をかけてゆっくりと斜面を下っていく流れです。海の中にあるので、目で見ることもできません。それでもこの流れは、地球規模で海水をかき混ぜる大きな海流の循環を支える、重要な役割を担っていると考えられています。
日本一は、立山の称名滝
日本でいちばん落差の大きな滝は、富山県立山町にある称名滝(しょうみょうだき)です。落差は350メートルで、4段に分かれて流れ落ちます。名前は、浄土宗を開いた法然が、滝の音を「南無阿弥陀仏」と唱える称名念仏の声のように聞いたことに由来すると伝えられています。
実は、称名滝のすぐ隣には、さらに落差の大きな滝が現れることがあります。ハンノキ滝と呼ばれ、落差はおよそ500メートル。ただし水が流れるのは、主に春から初夏にかけての雪解けの時期だけです。一年中流れているわけではないため、日本一の座は称名滝に譲っています。