世界一大きな湖は?
面積ならカスピ海。日本の国土とほぼ同じ広さで、水はしょっぱく、名前にも「海」とつきます。
37万km²
世界一大きな湖と聞いて、どこを思い浮かべるでしょうか。北アメリカの五大湖、アフリカのビクトリア湖、シベリアのバイカル湖。どれも有名な湖ですが、面積で世界一の座にあるのは、そのどれでもありません。
答えは、カスピ海です。名前には「海」とついていますが、地理の世界では一般に、世界最大の湖として扱われています。
日本がすっぽり入る湖
カスピ海は、ヨーロッパとアジアの境目あたりにあり、ロシア、カザフスタン、トルクメニスタン、イラン、アゼルバイジャンの5か国に囲まれています。その面積は約37万平方キロメートル。日本の国土(約37万8000平方キロメートル)とほぼ同じ広さで、日本最大の湖である琵琶湖の500倍以上にあたります。水位の変動などで面積は変わるため、資料によって数字には幅があります。
南北の長さはおよそ1200キロメートル。北部は水深が数メートルほどの浅い水域ですが、南部では深さが1000メートルを超えます。
しょっぱいのに「湖」
カスピ海の水は、ほんのりしょっぱい塩水です。塩分は平均で約1.2%と、ふつうの海水のおよそ3分の1。それでも「湖」と呼ばれるのは、地理学では一般に、陸地に囲まれて海とつながっていない水域を湖とみなすからです。淡水か塩水かは、湖かどうかの決め手ではありません。
カスピ海がしょっぱいのは、その成り立ちに理由があります。かつてこの一帯は、古い海の一部でした。地殻の動きなどによって大きな海から切り離され、取り残されたのがカスピ海の起源とされています。流れ込む川はあっても流れ出す川はなく、水は蒸発によって失われるため、溶けた成分は湖にたまっていきます。ヴォルガ川が注ぐ北部は塩分が薄く、蒸発の激しい東岸の入り江ガラボガズギョルでは、塩分がきわめて高くなっています。
湖か、海か。それが問題だった
カスピ海が湖か海かは、学問上の分類だけでなく、国どうしの利害にもかかわる問題でした。湖とみなすか海とみなすかで、湖底に眠る石油や天然ガスの分け方が変わってくるからです。
ソ連の崩壊によって沿岸の国が5か国に増えると、話し合いは長く続きました。2018年、5か国はカザフスタンのアクタウで、カスピ海の法的地位に関する条約に署名します。ただしこの条約は、カスピ海を「湖」とも「海」とも明確には定めず、独自の取り決めを設けるという形をとりました。世界一の湖は、法律の上では今も、湖とも海とも言い切れない特別な存在なのです。
淡水の湖なら、別の王者
しょっぱい湖は数に入れない、という立場をとるなら、答えは変わります。面積が最大の淡水湖は、北アメリカの五大湖のひとつ、スペリオル湖で、約8万2000平方キロメートル。北海道に匹敵する広さです。もっとも、隣り合うミシガン湖とヒューロン湖は幅の広い海峡でつながっていて水面の高さも同じなので、これをひとつの湖とみなせばスペリオル湖を上回る、という見方もあります。
水の量で比べると、王者はシベリアのバイカル湖です。最大水深は1600メートルを超え、世界で最も深い湖でもあります。たたえる水は約2万3600立方キロメートル。地球の表面にある凍っていない淡水の、およそ2割がこの湖に集まっています。誕生はおよそ2500万年前ともいわれ、世界で最も古い湖のひとつです。
「世界一大きな湖」は、広さで測るか、水の量で測るか、そして塩水を湖に含めるかどうかで、答えが入れ替わります。どの物差しを選ぶかによって、王者の顔ぶれはがらりと変わるのです。