世界一長い洞窟は?
アメリカのマンモス・ケーブです。測量された通路だけで680キロメートルを超えます。
686km
アメリカ南東部、ケンタッキー州の緑豊かな丘陵地帯。森の中にぽっかりと開いた岩の割れ目から、ひんやりとした空気が流れ出してきます。その奥に広がっているのが、知られている中で世界一長い洞窟、マンモス・ケーブです。
どれくらい長いのかといえば、これまでに測量された通路だけで、約686キロメートル。東京から広島までの直線距離に匹敵する長さの通路が、地下で網の目のようにつながっているのです。
2位を大きく引き離す長さ
洞窟の長さは、探検家が実際に入って測量し、地図に描くことのできた通路の合計で表されます。マンモス・ケーブの数字は年々伸びていて、2025年の時点で426マイル、約686キロメートルを超えました。
2位とされるのは、メキシコのユカタン半島にある水中洞窟「オックス・ベル・ハ」で、500キロメートルあまり。マンモス・ケーブは、その1.2倍以上の長さがあります。3位には中国の洞窟群が続きますが、いずれもマンモス・ケーブには届いていません。
石灰岩と「砂岩の屋根」
これほど長い洞窟ができた秘密は、この土地の地層にあります。
マンモス・ケーブの通路が刻まれているのは、3億年あまり前、この地域が浅い海の底だったころに積もった、厚い石灰岩の層です。石灰岩は、雨水や地下水に含まれるわずかな酸によって、少しずつ溶けていく性質があります。地下水は長い時間をかけて岩のすき間を広げ、やがて人が歩けるほどの通路をつくりあげました。
ここで大事な役割を果たしたのが、石灰岩の上にかぶさる砂岩の層です。水に溶けにくい砂岩が屋根のように上を覆っているため、通路が崩れにくく、地下の空間がそのまま保たれてきました。さらに、近くを流れる川が少しずつ谷を深く削るのに合わせて、地下水の通り道も下へ下へと移っていきました。その結果、マンモス・ケーブには何層にも重なった通路ができ、立体的な迷路のような構造になっているのです。
地図を描いたガイドと、狭いすき間
マンモス・ケーブの探検の歴史は、人間の物語でもあります。
19世紀の前半、この洞窟には観光客が訪れるようになりました。そのガイドの一人が、奴隷として働かされていたスティーブン・ビショップです。彼は案内の合間に洞窟の奥へと分け入り、それまで知られていなかった通路を次々に見つけました。1842年には、洞窟の詳しい地図を描いたとされています。
20世紀になると、近くのフリント・リッジという尾根の下にも、大きな洞窟群があることがわかってきました。そして1972年9月9日、探検隊がついに2つの洞窟群をつなぐ通路を発見します。決め手になったのは、のちに「タイト・スポット(狭い場所)」と名づけられた細いすき間でした。小柄な女性探検家パトリシア・クラウザーが、それ以前にこのすき間をくぐり抜けて先へ進んだことが、発見への道を開いたのです。この接続によって、マンモス・ケーブは世界一長い洞窟の座を確かなものにしました。
マンモス・ケーブ一帯は1941年に国立公園となり、1981年には世界遺産にも登録されています。暗闇に適応した、目のない魚やエビなどがすむ場所としても知られています。
日本一長い洞窟は
では、日本でいちばん長い洞窟はどこでしょうか。答えは、岩手県岩泉町にある安家洞(あっかどう)です。
安家洞は石灰岩の中にできた鍾乳洞で、総延長は約23.7キロメートル。国の天然記念物に指定されています。一般に公開されているのは入口から700メートルほどで、その奥には、探検でしか入れない長い通路が続いています。マンモス・ケーブとは桁が違いますが、日本の地下にも、まだ人の目にほとんど触れていない広大な世界が隠れているのです。