竹は120年に一度しか花が咲かない?
マダケやハチクは約120年周期とされます。ただし周期は竹の種類によってさまざまです。
120年
竹の花を見たことがあるでしょうか。竹林は日本のあちこちにあるのに、花を見たという人はめったにいません。それもそのはず、日本の代表的な竹であるマダケやハチクは、およそ120年に一度しか花を咲かせないといわれています。
人の一生より長い周期です。しかもいったん咲き始めると、広い範囲の竹がほぼ同じ時期に花をつけ、そのあと竹林ごと枯れてしまうことがあるのです。
稲穂に似た、地味な花
竹はイネ科の植物です。そのため花も稲や麦によく似ていて、色鮮やかな花びらはありません。枝先に茶色っぽい小さな穂がつき、そこから細いおしべが垂れ下がります。言われなければ、枯れた葉と見間違えてしまいそうな姿です。
竹が花をめったに咲かせなくても困らないのは、地下茎で増えることができるからです。地面の下を横に伸びる茎から、春になるとタケノコが次々に顔を出し、竹林は広がっていきます。何百本もの竹が並ぶ林でも、地下ではつながった同じ株、ということが珍しくありません。
「120年」はどこから来たのか
120年という数字は、誰かが実際に120年間見守って確かめたものではありません。古い文献に残る開花の記録をたどって推定されたものです。
マダケでは、1960年代に全国的な一斉開花が起きました。1966年には、国内のマダケ林の約3分の1にあたる約4万ヘクタールが枯れたとされています。竹材が不足し、竹でできた日用品がプラスチック製品に置き換わるきっかけのひとつになったともいわれます。120年周期が正しければ、次は2080〜2090年ごろということになります。
ハチクでは、前回の大規模な開花が1900年代の初め、明治時代の後期に記録されています。そして2010年代の後半から、各地でハチクの開花が相次いで報告されるようになりました。ちょうど「120年」が近づいたタイミングです。
咲いたのに、種ができない
植物はふつう、花を咲かせて種を残します。竹の一斉開花も、種から次の世代を育てるためのものと考えられてきました。ところが、最近のハチクの調査では意外な結果が出ています。
森林総合研究所などが2017年に開花した竹林を調べたところ、成熟した種子は見つかりませんでした。広島大学のチームが2020年から3年間、東広島市の竹林を追跡した調査でも、種子はまったくできず、竹は2022年の夏までにすべて枯れてしまいました。明治時代の文献にも、ハチクの成熟した種子は見られなかったという記録があるそうです。
では、竹林はどうやってよみがえるのでしょうか。森林総合研究所の調査では、生き残った地下茎から高さ1メートルほどの小さな竹が出てきた例が確認されています。一方で東広島の竹林では、開花後に現れた小さな竹も長くは続きませんでした。一斉開花のあと竹林がどう再生するのかは、まだよくわかっていないのです。
周期は種類によってまったく違う
「竹は120年に一度」とひとくくりにされがちですが、実際の周期は種類によって大きく異なります。
インド北東部からミャンマーにかけての山地に広がるメロカンナ・バッキフェラという竹は、およそ50年ごとに一斉に花を咲かせます。大量に実った果実を食べてネズミが爆発的に増え、竹の実を食べ尽くすと、今度は畑や貯蔵庫の穀物を襲います。インドのミゾラム州ではこの現象が「マウタム」と呼ばれ、1959年や2000年代後半にも深刻な飢饉をもたらしました。
周期が長く、しかも広い範囲で同時に咲く理由については、いくつかの仮説があります。有力なもののひとつは、食べきれないほどの種を一度に実らせることで、ネズミや鳥に食べ尽くされずに一部の種を生き残らせる、という考え方です。もっとも、種をつくらないハチクはこの説だけでは説明しにくく、竹の「時計」の謎はまだ解けていません。