世界一小さな花は?
水に浮かぶミジンコウキクサの仲間の花です。大きさは0.1〜0.2ミリほどしかありません。
0.1〜0.2mm
世界一大きな花といえば、直径が1メートル近くにもなるラフレシアが有名です。では反対に、世界一小さな花はどれくらいの大きさなのでしょうか。
答えは、池や田んぼの水面に浮かんでいるかもしれません。緑色の細かい粒が、水面をうっすらと覆っている光景を見たことはないでしょうか。その粒のひとつひとつが、立派な花を咲かせる植物なのです。
粒そのものが1本の植物
世界最小の花をもつのは、ミジンコウキクサ属(ウォルフィア属)と呼ばれる水草の仲間です。世界に約11種が知られ、日本ではミジンコウキクサという種が、本州の関東・北陸より西から沖縄にかけて記録されています。
その体の小ささは驚くほどです。ギネス世界記録では、1個体の長さが1ミリ未満、幅はわずか0.3ミリほどとされています。日本のミジンコウキクサも、長さ0.3〜0.8ミリ、重さは約150マイクログラム。指先に乗せても、ほとんど砂粒と見分けがつきません。英語では「ウォーターミール(水に浮かぶひき割り粉)」と呼ばれますが、水面に散らばったトウモロコシの粉のような見た目から来た名前です。
体のつくりもきわめて単純です。根はなく、葉と茎の区別もありません。同じウキクサの仲間でも、田んぼでよく見かけるウキクサには細い根が垂れ下がっていますが、ミジンコウキクサにはそれすらないのです。丸みを帯びた緑の粒は「葉状体(ようじょうたい)」と呼ばれ、この粒そのものが1本の植物の体なのです。花を咲かせる植物、つまり種子植物の中で、この仲間は世界最小とされています。
花はくぼみの中に
では、その花はどこに咲くのでしょうか。花は、葉状体の上の面の中央近くにある小さなくぼみの中に現れます。花びらはなく、1本の雄しべと1本の雌しべがあるだけ。大きさは0.1〜0.2ミリほどで、この文章の句点「。」よりも小さいくらいです。直径1メートル近いラフレシアと比べると、その差は5000倍から1万倍ほどにもなります。
日本のミジンコウキクサの場合、花の時期は7〜10月ですが、実際に咲くことはきわめてまれだとされています。見つけるには顕微鏡と、かなりの幸運が必要でしょう。
花が終わると、中にたった1個の種を含む実ができます。オーストラリアなどに生えるウォルフィア・アングスタの実は、長さ0.25ミリ、重さ70マイクログラムほど。世界一小さな花の仲間は、世界一小さな実も生み出しているのです。
花を咲かせなくても増える
花がめったに咲かないのに、なぜこの仲間は水面を覆うほど増えられるのでしょうか。その秘密は、体の一部から新しい体を生み出す増え方にあります。
葉状体の端にあるくぼみから、子どもの葉状体が芽を出すように育ち、やがて離れて独り立ちします。これを繰り返して、どんどん数を増やしていくのです。なかでもウォルフィア・ミクロスコピカという種は、約29時間で数が倍になるという報告があり、花を咲かせる植物の中で最も成長が速いとされています。
小さくて増えるのが速いうえに、栄養も豊富です。乾燥させた重さの3〜4割ほどがたんぱく質だという報告があるほか、植物にはめずらしくビタミンB12を含むことも報告されています。タイでは「パム」と呼ばれて市場で売られ、とくに東北部のイサーン地方では、なじみのある食材として料理に使われてきました。小さな水草が、未来の食料として研究者の注目を集めているのです。