世界一大きな葉は?
長さなら約26メートルのラフィアヤシ。切れ目のない1枚なら直径3メートル超のオオオニバスの仲間です。
26m
秋田県から北海道にかけて自生するアキタブキは、葉の直径が1.5メートル、高さが2メートルほどにもなります。アイヌの伝説には、フキの葉の下に住む小人「コロボックル」が登場しますが、この大きさなら人が雨宿りするのも夢ではなさそうです。
けれども世界に目を向けると、これをはるかにしのぐ葉があります。ただし「いちばん大きな葉はどれか」という問いの答えは、何をもって大きいとするかで変わってきます。
1枚で25メートルを超える葉
長さでいえば、王者はアフリカのラフィアヤシの仲間、ラフィア・レガリスです。アンゴラ、カメルーン、コンゴ共和国、ガボン、ナイジェリアの湿った低地の森に生えるヤシで、幹は地中に埋もれていて、地上からは葉だけが立ち上がっているように見えます。
フランスの植物学者フランシス・アレは1977年、この葉の長さを報告しました。測られた1枚は、葉の本体が16.47メートル、葉柄(葉の付け根の柄)が9.44メートル。合わせて25.91メートル、ビルの8階ほどの高さに相当します。植物界で知られている中で最大の葉とされています。
「それは葉というより枝では?」と思うかもしれません。ヤシのこうした葉は、1本の太い軸に小さな葉(小葉)がずらりと並んだ「羽状複葉」と呼ばれるつくりです。たくさんの葉が集まっているように見えても、植物学ではまとめて1枚の葉と数えます。
ちなみに、帽子やかごの材料として知られる「ラフィア」は、こうしたラフィアヤシの仲間の葉からとれる繊維です。
切れ目のない1枚ならオオオニバス
では、小葉に分かれていない、切れ目のない1枚の葉で比べたらどうでしょう。こちらの記録をもつのは、南米の水草、オオオニバスの仲間です。
2012年、ボリビアのサンタクルスにある自然公園ラ・リンコナダで育てられた株の葉が、直径3.2メートル、面積7.55平方メートルに達しました。この葉は「切れ目のない葉として世界最大」としてギネス世界記録に認定されています。それまでの記録は、1966年にマレーシアのサバ州で記録された、長さ3.02メートル、幅1.92メートルのクワズイモの仲間の葉でした。
おもしろいのは、この記録をもつ植物が、つい最近まで新種だと気づかれていなかったことです。イギリスのキュー王立植物園のカルロス・マグダレナさんらは、遺伝子などを詳しく調べ、2022年にこれを新種「ビクトリア・ボリビアナ」として発表しました。キューには1845年の標本をもとに描かれた絵も残っていましたが、長いあいだ、すでに知られていた別の種と考えられていたのです。
葉の裏の骨組みが建築に
オオオニバスの葉は、縁が10〜20センチほど立ち上がった、大きなお盆のような形をしています。表面には雨水を逃がす小さな穴があり、裏側には太い葉脈が網の目のように走って、巨大な葉を支えています。
この葉の裏の骨組みは、建築の歴史にも名を残しています。1849年、イギリスの庭師ジョセフ・パクストンは、近縁のビクトリア・アマゾニカをイギリスで初めて開花させました。彼はのちに、1851年のロンドン万国博覧会の会場となった巨大なガラス建築「クリスタル・パレス」を設計しますが、その構造は、この葉の葉脈から着想を得たといわれています。
大きさの物差しを変えれば、チャンピオンも変わる。長さのラフィアヤシ、広さのオオオニバスは、それぞれの土俵で頂点に立つ「世界一の葉」なのです。