「シャンプー」の語源は?
ヒンディー語の「チャーンポー(押せ、もめ)」です。もとは髪を洗うことではなく、体をもむマッサージを指していました。
お風呂場に置いてあるシャンプー。カタカナで書かれるので英語から来た言葉なのはわかりますが、英語の shampoo はどこから来たのでしょうか。
英語の中では、ちょっと変わった響きの単語です。それもそのはず、shampoo のふるさとは、遠く離れたインドの言葉でした。
もとはヒンディー語で「押せ」
shampoo のもとになったのは、ヒンディー語の「チャーンポー(chāmpo)」という言葉です。これは「押す、もむ」という意味の動詞「チャーンプナー(chāmpnā)」の命令形で、「押せ」「もめ」といった意味になります。
この言葉が英語に入ったのは、18世紀半ばの1762年ごろとされます。英語の shampoo が最初に指していたのは、インドで行われていた、油を使って頭などをもみほぐすマッサージのことでした。つまり、シャンプーはもともと「洗う」ではなく「もむ」ことを意味していたのです。
国王の「シャンプー医」
この言葉をイギリスで広めた人物として知られるのが、インド生まれのディーン・マホメッド(1759〜1851年)です。イギリス東インド会社の軍隊で外科医の見習いなどとして働いたあと、アイルランドを経てイギリスに渡り、1794年にはインド人として初めて英語で本を出版しました。1810年にはロンドンで、イギリス初のインド料理店とされる「ヒンドゥスタニー・コーヒーハウス」も開いています。
1810年代、マホメッドは海辺の保養地ブライトンに移り、インド式の薬草の蒸し風呂と「シャンプーイング(マッサージ)」を組み合わせた浴場を開きました。リウマチや関節のこわばりなどに効くとうたい、妻のジェーンも「シャンプーの技」を身につけて女性用の浴場を取り仕切ったといいます。これが評判を呼び、1822年には『シャンプーイング』という本も出版しています。やがて国王ジョージ4世とウィリアム4世の「シャンプー医」にまで任じられました。
「もむ」から「洗う」へ
マッサージを意味していた shampoo が、「髪を洗う」という意味で使われた記録が現れるのは、1860年のことです。もむ、という意味の言葉が、いつのまにか洗う意味に変わっていったのです。
19世紀末から20世紀の初めになると、髪を洗うための専用の製品が売られるようになりました。1927年にはドイツのハンス・シュワルツコフが、大量生産に向いた液体のシャンプーを改良し、自分の名前をつけたブランドを立ち上げています。こうして shampoo は、髪を洗う洗剤を指す言葉として世界に広がっていきました。
日本の「シャンプー」
日本でも、髪は昔から工夫して洗われてきました。平安時代の10世紀初めにまとめられた『延喜式』には、宮中で米のとぎ汁や白あずきの粉が髪を洗うのに使われていたことが記されています。鎌倉時代ごろまでは、ビナンカズラというつる植物を水にひたして出るぬめりも、髪を洗ったり整えたりするのに使われていました。
「シャンプー」という言葉が日本で広く使われるようになったのは、昭和の初めです。1932年に花王が「花王シャンプー」を発売しました。花王はこの商品について、「シャンプー」という言葉を日常語として定着させ、日本人の洗髪習慣を大きく変えたと紹介しています。
1987年には、朝に髪を洗う「朝シャン」が新語・流行語大賞の新語部門・表現賞に選ばれました。資生堂のテレビCMの「朝のシャンプー」というフレーズを、高校生たちが縮めて言い始めたものです。インドの「押せ」から始まった言葉は、日本で新しい言葉まで生み出したのです。