円周率はどこまで計算された?
2025年に314兆桁まで計算されました。ただし、宇宙探査の計算でも使うのは十数桁ほどです。
314兆桁
円の周りの長さは、直径のおよそ3.14倍。この比が円周率です。3.14159265358979…と、小数点以下の数字は、同じ並びをくり返すこともなく、終わりなく続いていきます。
終わりがないとわかっていても、人はその先を知りたくなるものです。円周率の桁を追いかける挑戦は、古代ギリシャから始まり、いまでは巨大なコンピューターを何か月も動かし続ける大計算になっています。
手計算の時代
紀元前3世紀ごろ、ギリシャのアルキメデスは、円の内側と外側にぴったり接する正九十六角形を考え、円周率が「3と71分の10」より大きく「3と7分の1」より小さいことを示しました。小数にすると、3.1408から3.1428のあいだです。
5世紀の中国では、祖沖之(そちゅうし)が小数点以下7桁まで正しい値を求めています。17世紀初めのオランダでは、ルドルフ・ファン・ケーレンが生涯をかけて35桁まで計算しました。ドイツなどでは、円周率が「ルドルフの数」と呼ばれたこともあるほどです。
日本の和算家も負けていません。江戸時代の1722年、建部賢弘(たけべかたひろ)は、41桁まで正しい値を求めました。
手計算の時代の最高記録は、1873年にイギリスのウィリアム・シャンクスが発表した707桁です。ところが、20世紀に入って検算したところ、528桁目から先がまちがっていたことがわかりました。長い年月をかけた計算の、最後の4分の1ほどが誤りだったのです。
コンピューターが桁を一気に伸ばした
1949年、アメリカの初期の電子計算機ENIACが、70時間かけて2037桁を計算しました。人が一生かけて届いた桁数を、機械はわずか3日ほどで追い越したのです。
その後の記録争いでは、日本人が大きな役割を果たしてきました。東京大学の金田康正さんのチームは、スーパーコンピューターを使って何度も記録を塗り替え、2002年には1兆2411億桁に到達しました。2011年には、長野県の会社員、近藤茂さんが自作のパソコンで10兆桁を達成して話題になりました。さらにGoogleの岩尾エマはるかさんは、クラウドを使って2019年に31兆4000億桁、2022年に100兆桁を計算しています。
最新記録は314兆桁
記録はその後も伸び続けています。2025年5月には、カナダのリーナス・メディア・グループなどが300兆桁を発表。同じ年の12月には、アメリカのストレージレビューのチームが、1台のサーバーを約110日間止めずに動かし、314兆桁の新記録を発表しました。3.14にちなんだ、なんとも縁起のいい数字です。
これほどの計算になると、数字を書き出すだけでも大変です。途中の計算には膨大な記憶装置が必要で、このときは容量60テラバイトを超える記憶装置を何十台もつなぎ、計算を進めました。
実際に必要なのは何桁?
では、そんなに多くの桁は役に立つのでしょうか。NASAのジェット推進研究所によると、惑星探査機の航行のように最も精密な計算でも、使っている円周率は3.141592653589793、小数点以下15桁です。直径が約640億キロメートルの円を描いても、円周の誤差は1.5センチメートルほどにしかなりません。観測できる宇宙全体の大きさの円を、水素原子1個の幅の精度で計算するのにも、38桁あれば足ります。
それでも記録への挑戦が続くのは、コンピューターの性能や信頼性を確かめる格好の試験になるからです。何か月も休まず正確に計算し続けられるかどうかが、円周率の桁数で試されているのです。