フクロウはなぜ首がよく回る?
目玉を動かせない代わりに、人の2倍ある首の骨と血流を守るしくみで、左右に約270度まで回せます。
270度
森や動物園でフクロウを見かけたとき、こちらに背中を向けていたはずの鳥が、体はそのままで顔だけをくるりとこちらへ向けることがあります。まるで首がねじ切れてしまいそうな動きに、思わずどきりとした人もいるかもしれません。
「フクロウの首は一回転する」という話も耳にしますが、さすがにそれは言い過ぎです。それでも、回せる角度は左右それぞれ最大でおよそ270度。人間の首が左右に80度前後しか回らないことを思えば、驚くほどの柔らかさです。
目玉が動かないから、首を回す
フクロウがこれほど首を回すのは、その目に理由があります。フクロウの目は頭の大きさに比べてとても大きく、暗い夜でもわずかな光を集められるよう、筒のような細長い形をしています。そのため眼球が頭の骨にぴったりと収まっていて、人間のようにきょろきょろと目玉だけを動かすことができません。
私たちは横にあるものを見るとき、まず目だけを動かします。フクロウにはそれができないので、見たい方向へ頭ごと向けるしかないのです。草むらの小さな物音に気づいたら、さっと首を回してそちらを見すえる。夜の狩人にとって、よく回る首は動かない目を補うための、なくてはならない道具だといえます。
人の2倍ある首の骨
首の柔らかさを生み出しているのが、骨の数です。人間を含むほとんどの哺乳類では、首の骨(頸椎)は7個と決まっています。あれほど首の長いキリンでさえ7個です。
一方、鳥の仲間は首の骨の数が種類によってまちまちで、フクロウの首の骨は14個あります。人の2倍の数の骨が、少しずつ角度を分け合うことで、首全体を大きくひねることができるのです。ふっくらした羽毛に隠れて見えませんが、フクロウの首は意外なほど長く、骨格標本で見るとS字形に曲がっているのがわかります。
血管がちぎれない秘密
とはいえ、首をねじれば、その中を通る血管もねじれます。人間の場合、首を急に強くひねると、首の骨の中を通って脳に血を送る椎骨動脈が傷つき、脳卒中につながることがあります。では、なぜフクロウは平気なのでしょうか。
この謎に挑んだのが、アメリカのジョンズ・ホプキンス大学のチームです。医療イラストレーターのファビアン・デ・コック=メルカドさんらは、自然に死んだシロフクロウやアメリカワシミミズクなど12羽ほどのフクロウに造影剤を注入し、血管造影やCTスキャンで首の血管を詳しく調べました。2013年に発表された成果からは、いくつもの工夫が見えてきました。
まず、椎骨動脈が通る首の骨の穴が、動脈の太さのおよそ10倍もあります。まわりにゆとりがあるので、首をねじっても血管が押しつぶされにくいのです。また、椎骨動脈はほかの鳥よりも高い位置、12番目の首の骨のあたりから骨の中に入るため、そのぶん血管にたるみの余裕があります。
さらに驚かされるのが、あごの下の血管です。造影剤を入れていくと、この部分の血管はどんどんふくらみ、血をためる小さな貯水池のようになりました。人間の動脈は枝分かれするにつれて細くなるのがふつうで、こんなふうにふくらむことはありません。首を大きく回して血の流れが滞っても、ためておいた血で脳と目に血を送り続けられると考えられています。
首の血管どうしをつなぐ細い連絡路があることもわかりました。一方の通り道がふさがれても、別のルートから脳へ血が届くようになっているのです。回る首は、骨と血管の両方の工夫に支えられていたわけです。