ペンギンにひざはある?
あります。太ももとひざは、羽毛に覆われた胴体の中に隠れています。
水族館でペンギンを眺めていると、短い足をちょこちょこと動かして歩く姿に、つい見とれてしまいます。胴体からいきなり足先が生えているようなあの体つきを見ると、ひざなど最初からないようにも思えてきます。
けれど、ペンギンにもひざはちゃんとあります。しかも、その脚は見た目よりずっと長いのです。私たちに見えないのは、ひざが羽毛に包まれた胴体の内側に隠れているからです。
羽毛の下は「空気いす」
ペンギンの脚の骨格は、基本的にはほかの鳥と同じつくりです。腰から太ももの骨(大腿骨)が伸び、ひざの関節があって、その先にすねの骨、さらに足首から先の骨が続きます。
違うのは、その姿勢です。ペンギンの太ももは胴体に沿うように折りたたまれ、ひざは深く曲がったまま、厚い脂肪と羽毛の中に収まっています。立っているときも歩いているときも、骨格だけを見れば、いつも腰を落としてしゃがみこんだような格好なのです。人間にたとえるなら、壁のない「空気いす」をずっと続けているようなものでしょうか。
外から見えている短い「足」は、主にすねの下のほうと、足首から先の部分です。ペンギンが短足に見えるのは、脚が短いからではなく、脚の大部分を体の中にしまいこんでいるからなのです。
鳥の「逆向きのひざ」は、実はかかと
ここで、ペンギンに限らない鳥全般のよくある勘違いにも触れておきましょう。ハトやニワトリ、フラミンゴの脚を見ると、人間のひざとは反対向きに曲がる関節があります。あれを見て「鳥のひざは逆に曲がる」と思っている人は多いのではないでしょうか。
実は、あの関節はひざではなく、かかと(足首)にあたります。鳥はいわば、いつもつま先立ちで歩いているのです。かかとから下に伸びる細長い部分は、人間でいえば足の甲の骨にあたります。本当のひざはさらに上、羽毛に隠れたあたりにあり、人間と同じ向きに曲がります。
つまり、鳥のひざはどれも多かれ少なかれ羽毛の中に隠れています。ペンギンは、その傾向がとりわけ極端な鳥だといえるでしょう。
水の中では「たたむ」のが正解
では、なぜペンギンは脚をこんなふうにしまいこんでいるのでしょう。いちばん大きな理由は、水の中での暮らしにあると考えられています。
ペンギンは、翼をひれのように使って水中を「飛ぶ」鳥です。もし脚が胴体からぶら下がっていたら、大きな水の抵抗になってしまいます。脚を体の中に折りたたみ、短い足先だけを後ろへ流せば、体は抵抗の少ない流線形になります。泳いでいるあいだ、足先と尾は進む向きを調整するかじの役目を果たします。
寒さ対策の面でも、この形は理にかなっていると考えられます。体の外に突き出た部分が少ないほど、冷たい水や風に体の熱を奪われにくくなるからです。
よちよち歩きは、実は省エネ
そのぶん陸の上では、歩き方が独特になります。体を左右に揺らしながら進む、あのよちよち歩きです。一見すると無駄の多い歩き方に見えますが、2000年に科学誌「ネイチャー」に発表されたアメリカの研究によると、そうともいえないようです。
研究者たちがコウテイペンギンの歩き方を詳しく測ったところ、体を左右に揺らすことで、振り子のように位置のエネルギーと運動のエネルギーを交互にやりとりし、歩くためのエネルギーをうまく再利用していることがわかりました。その回収率は最大で約80%と、人間の歩行(約65%)を上回るほどでした。ペンギンが歩くのに多くのエネルギーを使うのは、揺れのせいではなく、短い足をすばやく動かさなければならないためだと考えられています。
もっとも、ペンギン自身も歩くのが得意だとは思っていないのかもしれません。雪や氷の上を長く移動するとき、腹ばいになって翼と足で体を押し、そりのように滑っていく姿もよく見られます。