タコの心臓はいくつある?
答え
3つあります。しかも、流れている血は青色です。
3つ
たこ焼きに酢だこ、お刺身。日本の食卓でおなじみのタコですが、その体の中をのぞいてみると、私たちの常識がことごとく通用しないことに驚かされます。
まず心臓の数からして違います。タコには心臓が3つあります。そして、その心臓が送り出している血液は、赤ではなく青い色をしているのです。
3つの心臓の役割分担
3つの心臓は、それぞれ担当が決まっています。
ひとつは「体心臓」と呼ばれ、全身に血液を送り出す、いわば本社の心臓です。残りの2つは「えら心臓」と呼ばれ、左右のえらの根元に1つずつあります。えら心臓の仕事は、体を巡って戻ってきた血液を、酸素を取り込むためにえらへ押し出すことです。
なぜ、そんな手間のかかる仕組みになっているのでしょう。えらの中の細い血管を通り抜けるには、それなりの圧力が必要です。そこで、えらの手前にポンプを追加して、血液の流れを助けているのだと考えられています。
面白いのは、タコが泳いでいるあいだ、全身に血を送る体心臓が止まってしまうことです。タコが水を勢いよく噴射して泳ぐのは、どちらかといえば非常時の手段。ふだんは海底を腕で歩くように移動しているのも、泳ぐことが体にとって負担の大きい行動だからかもしれません。
銅でできた青い血
タコの血が青いのは、酸素を運ぶ物質が私たちとは違うからです。
人間の血液では、ヘモグロビンという鉄を含むタンパク質が酸素を運んでいます。鉄が酸素と結びつくと赤く見えるため、血は赤いのです。一方、タコの血液ではヘモシアニンという銅を含むタンパク質が酸素を運びます。銅は酸素と結びつくと青みを帯びるため、タコの血は青く見えます。
ヘモシアニンは、ヘモグロビンほど効率よく酸素を運べないといわれます。3つの心臓で血液を力強く巡らせる仕組みは、この弱点を補う工夫のひとつとも考えられています。ちなみに、イカも同じく3つの心臓と青い血をもっています。
腕で考える生きもの
タコのふしぎは、心臓と血だけでは終わりません。タコには約5億個の神経細胞(ニューロン)があるとされ、これは無脊椎動物としては際立って多い数です。
さらに驚くのは、その配置です。神経細胞のおよそ3分の2は、脳ではなく8本の腕に分布しているといわれます。それぞれの腕は、脳から細かい指示を受けなくても、ある程度は自分で判断して動くことができます。吸盤で触れたものの手ざわりや味を感じ取り、つかむか離すかを腕の側で決めているようなのです。
脳がおおまかな方針を示し、細かい作業は現場の腕に任せる。タコの体は、中央集権というより、権限を大きく委ねた組織に近いのかもしれません。瓶のふたを開けたり、水槽から抜け出したりと、タコが「賢い」と評される背景には、こうした独特の神経の仕組みがあります。
心臓が3つでも、寿命は短い
これほど精巧な体をもちながら、多くのタコの寿命は1〜2年ほどと短めです。メスは産卵すると卵の世話に専念し、ほとんど食事もとらずに卵を守り続け、子どもがかえるころに一生を終えることが多いのです。
この急な衰えには、目のそばにある「視腺」という小さな器官が関わっていることがわかっています。1970年代の実験では、産卵後のメスからこの視腺を取り除くと、卵の世話をやめて再び食事をとるようになり、寿命も延びたと報告されています。体の終わり方までもが、あらかじめ組み込まれたプログラムのように進んでいくのです。