「ジーンズ」の語源は町の名前?
はい。イタリアの港町ジェノバのフランス語名「ジェーヌ」が語源とされています。
1873年
仕事着にも普段着にもなり、はき古すほど味が出る。ジーンズほど世界中の人に愛されている服は、ほかにないかもしれません。年齢も国籍も問わず、街を歩けば誰かが必ずはいています。
そんな身近な服ですが、「ジーンズ」という名前の意味を考えたことはあるでしょうか。実はこの言葉、もともとは服の名前ではなく、ある町の名前だったといわれています。
イタリアの港町から来た名前
その町とは、イタリア北西部の港町ジェノバです。ジェノバは中世から地中海貿易で栄えた都市で、16世紀ごろには、ここから丈夫な綿の生地がヨーロッパ各地へ輸出されていました。ジェノバの船乗りたちは、濡れても乾いても扱いやすいこの生地で作ったズボンをはいていた、という話も伝わっています。
ジェノバはフランス語で「Gênes(ジェーヌ)」と呼ばれます。この生地がイギリスに渡ると、地名がなまって「jean(ジーン)」と呼ばれるようになりました。やがてその生地で作ったズボンが、複数形の「jeans」と呼ばれるようになったと考えられています。
「デニム」はフランスの町から
ジーンズの生地をさす「デニム」にも、町の名前が隠れています。こちらは南フランスの町ニームです。ニームでは「serge de Nîmes(セルジュ・ド・ニーム)」、つまり「ニームのサージ」と呼ばれる綾織りの丈夫な生地が作られていました。この「de Nîmes(ド・ニーム)」が縮まって、英語の「denim」になったというのが定説です。
もっとも、当時ニームで作られていた生地が、いまのデニムと同じものだったかどうかについては、研究者のあいだでも意見が分かれています。名前だけが受け継がれ、中身は時代とともに変わっていった、と考えるのが自然かもしれません。いずれにしても、ズボンの名前にはイタリアの町が、生地の名前にはフランスの町が刻まれていることになります。
金鉱の町で生まれた作業ズボン
いまのような形のジーンズが生まれたのは、19世紀のアメリカ西部です。ゴールドラッシュにわいたこの地域では、鉱山や牧場で働く人々のために、とにかく丈夫な作業着が求められていました。
ネバダ州の仕立て屋ジェイコブ・デイビスは、ポケットの角がすぐに破れてしまうという悩みを解決するため、縫い目を銅のリベットで留めるアイデアを思いつきます。彼は生地を仕入れていたサンフランシスコの商人リーバイ・ストラウスと組んで特許を申請し、1873年5月20日に認められました。これが、いまに続くジーンズの出発点とされています。
ただし、当時このズボンは「ウエスト・オーバーオール」と呼ばれていました。「ジーンズ」という呼び名が広く使われるようになるのは、20世紀の半ば、映画スターや若者たちがおしゃれとしてはきこなすようになってからのことです。リーバイスの会社自身が「ジーンズ」と呼びはじめたのも、1960年ごろだといわれます。作業着がファッションに変わったとき、ようやくヨーロッパの町の名前が主役になったのです。
日本の「ジーパン」
日本でジーンズが広く知られるようになったのは、第二次世界大戦後のことです。駐留したアメリカ兵がはいていたことや、放出品として出回ったことがきっかけでした。
日本ではジーンズのことを「ジーパン」とも呼びます。これは日本で生まれた言葉で、「ジーンズのパンツ」を縮めたという説と、アメリカ兵を表す「GI」がはいていたズボン、つまり「GIパンツ」から来たという説があります。チノクロスで作ったズボンを「チノパン」と呼ぶのと同じ作り方だと考えると、前者の説に分がありそうですが、はっきりとはわかっていません。
1960年代になると、国内でもジーンズが作られるようになります。なかでも岡山県倉敷市の児島は、学生服づくりなどで培った縫製の技術を生かして、国産ジーンズの一大産地として知られるようになりました。