「ハンバーガー」の語源は?
ドイツの港町ハンブルクの英語読み「ハンバーグ」に、「〜の」を表す「-er」がついた言葉です。
ふかふかのパンに、焼きたての肉のパティとレタス、トマト。ハンバーガーは、いまや世界中で食べられている料理です。日本でも、ファストフード店から専門店まで、さまざまなハンバーガーが味わえます。
ところで、「ハンバーガー」という名前は何を意味しているのでしょうか。「ハム(ham)」が入っているのかと思いきや、ハンバーガーにハムは使いません。じつはこの名前、ある町の名前から来ているのです。
ハンブルクの人、ハンブルク風
「ハンバーガー」の「ハンバーグ(Hamburg)」は、ドイツ北部の港町ハンブルクを英語で読んだものです。英語の「-er」には「〜の人」「〜のもの」という意味があり、「Hamburger」はもともと「ハンブルクの」「ハンブルク風の」という意味になります。
ハンブルクと肉料理の結びつきについては、はっきりしないところもあります。ハンブルクの労働者が安くて硬い肉を細かく刻んで焼いたのが始まりだという説や、生の肉を刻んだ「タルタルステーキ」が原型だという説などがあり、諸説あるのが実情です。
19世紀には、ハンブルクの港から多くの人々が船でアメリカへ移住しました。ひき肉を焼く料理はアメリカでも親しまれるようになり、「ハンバーグ・ステーキ(Hamburg steak)」、つまり「ハンブルク風の厚い肉」と呼ばれるようになります。アメリカの新聞には、1884年にはこの名前が登場しています。
パンにはさんだのは誰?
では、ハンバーグ・ステーキをパンにはさんだのは誰なのでしょうか。これがまた、名乗りを上げる人が大勢いる問題です。
1885年にウィスコンシン州の祭りで、肉だんごをパンではさんで売った少年。同じ年に、ニューヨーク州のハンバーグという町の祭りで、ひき肉のサンドイッチを売った兄弟。1900年ごろにコネチカット州で小さな食堂を開いた男性。いずれも「元祖」とされていますが、決め手はありません。確かなのは、1904年にセントルイスで開かれた万国博覧会のころには、ハンバーガーが全米で知られるようになっていたことです。
ちなみに、1896年のシカゴの新聞には「ハンバーガー・ステーキ・サンドイッチ」が、小さなパティにしてあらかじめ用意され、注文を受けてから焼かれる、と紹介されています。ファストフードの原型は、もうこのころにはできていたのです。
「バーガー」がひとり立ちするまで
ハンバーガーが人気になると、言葉のほうにも面白いことが起こります。英語を話す人たちのあいだで、「Hamburger」を「ham(ハム)」と「burger」の組み合わせだと受けとる見方が広まったのです。本来は「Hamburg」と「-er」に分かれる言葉なのに、区切る位置がずれてしまったわけです。
その結果、「バーガー」がまるで「パンにはさんだ肉料理」を意味する言葉のように独立し、ほかの言葉とくっつき始めます。1928年のロサンゼルスのレストランのメニューには、すでに「チーズバーガー」の名前が見られます。1930年代の後半には「バーガー」単独でも使われるようになったとされ、いまではチキンバーガーやフィッシュバーガー、植物性の材料でつくる「ベジバーガー」まで、さまざまな「バーガー」が生まれています。
言葉の切れ目を勘違いして新しい言葉が生まれる現象は、ほかの言葉でも起こります。言葉は、正しい語源よりも、使う人たちの「こう聞こえる」という感覚で育っていくこともあるのです。
日本の「ハンバーグ」は独自の道へ
日本では、パンにはさんだものを「ハンバーガー」、はさまずにお皿で食べるものを「ハンバーグ」と呼び分けます。ところが英語圏では、どちらも「ハンバーガー」と呼ぶことが多く、日本の「ハンバーグ」にあたる「Hamburg steak」は、アメリカではそれほど一般的な言葉ではありません。
日本で初めてハンブルク風のひき肉料理が披露されたのは、1882年に東京で開かれた料理学校の開校披露の席だったとされます。1905年の西洋料理の本には「ハムボーグ、ステーキ」という名前で登場し、やがて「ハンバーグステーキ」、さらに縮めて「ハンバーグ」と呼ばれるようになりました。いまでは大根おろしやしょうゆで味わう和風ハンバーグまであり、日本の家庭料理として独自の進化をとげています。