世界最古のジョークは?
約3900年前、シュメールのことわざに記された「おなら」の話が最古とされています。
3900年前
冗談を言って笑い合うのは、きっと人類と同じくらい古い習慣です。けれども、口から口へ伝わる笑い話は、その場で消えてしまいます。私たちがたどれるのは、誰かが文字に書き残してくれたものだけです。
では、記録に残る最古のジョークとは、どんなものなのでしょうか。2008年、イギリスの研究者たちがこの問いに挑み、ひとつの答えを出しました。
4000年前の「おなら」の話
調査をまとめたのは、イギリスのウルヴァーハンプトン大学のポール・マクドナルド博士らのチームです。テレビ局の依頼を受けて、古代から伝わる笑い話を2か月ほどかけて調べました。対象にしたのは、はっきりした前振りとオチがあるものです。
その結果、最古とされたのが、古代メソポタミアのシュメール人のことわざでした。
大昔から一度も起きたことがないもの。若い女性が夫のひざの上でおならをしなかったこと。
もったいぶった前置きから、思いがけない下品なオチへ。紀元前1900年ごろの古バビロニア時代の粘土板に記されたもので、起源は紀元前2300年ごろまでさかのぼる可能性もあるとされています。**およそ3900年前の、新婚の夫たちへの「警告」**です。
笑いはいつも「タブー」のそばに
世界最古のジョークがおならの話だったというのは、少しがっかりするでしょうか。けれども、マクドナルド博士はこう指摘しています。ジョークの形は時代によって、問答だったり、気のきいたことわざだったり、なぞなぞだったりとさまざまだが、共通しているのは、タブーに踏みこむ姿勢と、ちょっとした反抗心だ、と。
人前で口にしにくいことを、あえて言葉にする。その小さなルール破りが、聞き手の緊張をほどいて笑いを生みます。4000年前の人々も、私たちと同じところで笑っていたのかもしれません。
同じ調査では、10世紀のアングロ・サクソン時代のイングランドで書かれた、きわどい意味にも取れる「鍵」のなぞなぞなども、古いジョークの例として選ばれました。
退屈な王さまを楽しませるには
2番目に古いとされたのは、紀元前1600年ごろの古代エジプトの話です。調査では「退屈したファラオを楽しませるには?」という問いに、「網だけを身にまとった若い女性たちを舟に乗せてナイル川を下らせ、ファラオに魚を捕りにいくよう勧める」と答える、なぞなぞ風の形で紹介されました。
もとになっているのは、「ウェストカー・パピルス」に残る物語です。宮殿で退屈していたスネフェル王に、神官が「20人の若い女性に、王の舟をこがせてはどうでしょう」と提案します。女性たちは網をまとって湖で舟をこぎ、王はたいそう喜びました。もとは短いジョークというより、宮廷を舞台にした物語の一場面なのです。
1600年前の「笑い話の本」
一冊にまとまった笑い話集として現存する最古のものは、古代ギリシャ語で書かれた『フィロゲロス』です。題名は「笑いを愛する者」という意味で、4世紀ごろにまとめられたと考えられています。収められた笑い話は264編。とくに多いのが、理屈ばかりで世間知らずな「学者先生」が主人公の話です。
たとえば、こんな話があります。学者と、はげ頭の男と、床屋の3人が旅をして、交代で寝ずの番をすることになりました。最初の番になった床屋は、退屈しのぎに、眠っている学者の頭をそり上げてしまいます。交代の時間に起こされた学者は、頭をなでてつるつるなのに気づき、こう言いました。「床屋のやつ、間違えて私の代わりにはげ頭を起こしたな」
おしゃべりな床屋に「どんなふうに切りましょうか」と聞かれた客が、「黙って」と答える話も入っています。2008年には、イギリスのコメディアンが『フィロゲロス』の笑い話を現代の観客の前で披露してみせました。