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    オジギソウはなぜお辞儀する?

    葉のつけ根の細胞から水が抜けて葉が垂れるしくみです。虫に食べられにくくする役目があるとわかっています。

    羽のように並んだ小さな葉に指先で触れると、葉が次々と閉じていき、やがて葉のつけ根からがっくりと垂れ下がる。オジギソウは、子どものころに夢中で触った覚えのある人も多い植物です。

    植物はふつう、目に見える速さでは動きません。ところがオジギソウは、触れたとたんに目に見えて動きます。筋肉も神経も持たない植物が、どうやってこんなにすばやく動くのでしょうか。そして、何のために動くのでしょうか。

    恥ずかしがり屋の草

    オジギソウは、南アメリカ原産のマメ科の植物です。日本には江戸時代の天保年間(1830〜1844年)にオランダ船で持ち込まれ、珍しい植物として大切にされました。触れるとお辞儀をするように見えることから「オジギソウ」、夜になると葉を閉じて眠るように見えることから「ネムリグサ」とも呼ばれます。

    学名は Mimosa pudica(ミモサ・プディカ)。「プディカ」はラテン語で「恥ずかしがり屋の」という意味です。触れられて顔を伏せる様子を、洋の東西を問わず人の仕草に重ねてきたのです。

    動きの主役は「葉枕」

    オジギソウの動きを生み出しているのは、葉や小葉のつけ根にある「葉枕(ようちん)」という小さなふくらみです。

    葉枕の中には、水をたっぷり含んでふくらんだ細胞がつまっています。刺激を受けると、葉枕の片側の細胞からカリウムなどのイオンが外へ流れ出し、それを追いかけるように水も出ていきます。水が抜けた側の細胞はしぼみ、反対側の細胞はふくらんだまま。こうして葉枕が片側に折れ曲がり、葉が閉じたり、葉柄が垂れ下がったりするのです。

    オジギソウの枝の線画。左には斜め上に伸びた葉柄の先に羽のような小葉が並び、右には垂れ下がった葉柄の先で小葉が閉じている
    オジギソウの葉の図(1911年の『ブリタニカ百科事典』より)。aは立った状態の葉柄、bは垂れ下がった状態の葉柄。cは閉じた小葉、dは開いた小葉です。葉柄のつけ根のふくらみ(p)が葉枕です。出典: Alfred Barton Rendle / Public domain / Wikimedia Commons

    「光るオジギソウ」でわかったこと

    オジギソウの研究はチャールズ・ダーウィンの時代までさかのぼりますが、刺激がどう伝わり、何のために動くのかは長く謎のままでした。

    2022年、埼玉大学の豊田正嗣教授らの研究グループは、カルシウムイオンに反応して光る遺伝子を組み込んだ「光るオジギソウ」を作りました。葉を傷つけると、その場所からカルシウムイオンと電気の信号が葉脈を通って広がっていく様子が光で見えるようになります。信号が葉枕に届くと、わずか0.1秒ほどで葉が動き始めることがわかりました。

    研究グループはさらに、ゲノム編集で葉枕ができない「お辞儀をしないオジギソウ」も作り、動く葉と動かない葉を並べてバッタに食べさせました。すると、バッタは動かない葉のほうを多く食べました。動く葉では、食べている最中に葉が次々と閉じるため、バッタが食べるのをやめてほかの場所へ移っていったのです。お辞儀は、虫から身を守るための動きだったのです。

    細い糸のような淡いピンク色の雄しべが球形に集まった花と、その後ろに広がる羽のような葉
    オジギソウの花。細い糸のように見えるのは雄しべで、小さな花がたくさん集まって、ポンポンのような丸い形をつくっています。出典: NonNerd / CC0 / Wikimedia Commons

    お辞儀は「覚える」?

    ただし、お辞儀にはコストもかかります。葉を閉じている間は光を十分に受けられず、元の姿に戻るまでには十数分から30分ほどかかります。むやみにお辞儀を続けるのは損なのです。

    2014年、オーストラリアの研究者モニカ・ガリアーノさんらは、鉢植えのオジギソウを少しの高さから何度も落とす実験をしました。最初は落とされるたびに葉を閉じていたオジギソウは、繰り返すうちに葉を閉じなくなっていきました。それでも手で揺さぶると葉を閉じたので、疲れて動けなくなったわけではありません。「落とされても危険はない」と学んだかのようでした。しかも1か月後に同じ実験をしても、葉を閉じない状態が続いていたといいます。

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