火星の夕焼けは青い?
青くなります。空に舞う細かいちりが青い光を太陽の近くに集めるため、沈む太陽のまわりが青白く光ります。
地球の夕焼けは、太陽のまわりがオレンジや赤に染まります。日中は青い空が、夕方には赤く変わる。私たちにとっては、ごく当たり前の光景です。
では、地面も空も赤っぽい「赤い惑星」火星では、夕焼けはどんな色になるのでしょうか。もっと真っ赤な夕焼けを想像するかもしれません。ところが、火星の探査車が撮影した夕日は、その予想を見事に裏切るものでした。
探査車が見た「青い夕日」
2015年4月15日、NASAの探査車キュリオシティは、火星のゲール・クレーターで、地平線に沈んでいく太陽をカラーで撮影しました。キュリオシティにとって初めてのカラーの夕日です。
写っていたのは、灰色がかった空に浮かぶ小さな白い太陽と、そのまわりに広がる青白い光でした。火星の夕焼けは、太陽の近くが青く染まるのです。
画像処理で色を大げさにしたわけではありません。NASAによると、この写真はカメラのくせを取り除くように色を調整したもので、撮影したカメラは人の目とよく似た色の見え方をします。しかも人の目より少しだけ青に鈍いので、その場に人が立っていても、少なくとも写真と同じくらいには青く見えると考えられます。2005年には、別の探査車スピリットも、グセフ・クレーターで同じような青い夕日をとらえています。
主役は、空に舞う細かいちり
地球の空が青いのは、空気の分子が太陽の光のうち青い光を四方八方に散らすからです。夕方になると、光が空気の中を長い距離進むうちに青い光は散らされて減り、残った赤い光が届くので、夕焼けは赤くなります。
火星の大気は、地球の100分の1ほどの薄さしかありません。そのかわり、空にはいつも細かいちりが舞っています。大きさは数マイクロメートル(1000分の数ミリ)ほどで、空気の分子よりずっと大きな粒です。
このちりは、光の色によって散らし方が違います。黄色や赤の光は空のあちこちへ広く散らされますが、青い光はあまり向きを変えずに、太陽の方向に近いところを進みます。そのため、太陽のまわりにだけ青い光が集まって見えるのです。光が大気の中を長く通る夕方には、この効果がいっそう強くなります。キュリオシティの観測を計画したアメリカ・テキサスA&M大学のマーク・レモンさんは、ちりの大きさが「ちょうど青い光が少しだけ効率よく大気を通り抜けられる大きさ」なのだと説明しています。
昼の空は、赤みがかっている
青いのは太陽のまわりだけで、空のほかの部分は黄色からオレンジ色をしています。昼間の火星の空も、地球のような青ではなく、赤みがかった色です。ちりのもとになっている地面の土や岩に、赤さびと同じ酸化鉄が多く含まれているためです。
1976年7月、NASAの着陸機バイキング1号が火星の表面から初めてのカラー写真を送ってきたとき、最初に公開された画像では、空が地球のように青く写っていたといわれます。急いで公開したため、色の調整が十分ではなかったのです。きちんと調整し直すと、空は赤みがかった色をしていました。火星の空は、昼は赤っぽく、夕方は太陽のまわりが青い。地球とはちょうど逆のような色合いです。
夕日は、ちりの「ものさし」
青い夕日は、見た目が美しいだけではありません。夕方や明け方の空の明るさや色を調べると、ちりが大気のどれくらい高いところまで舞い上がっているかがわかります。2015年のキュリオシティの撮影も、砂嵐と砂嵐の合間、上空にちりが残っている時期に行われました。
高いところにちりが多いと、太陽が沈んだあとも、その光がちりに散らされて空に回り込みます。そのため火星の薄明かりは長く、日の入りのあとや日の出の前、最大で2時間ほども続くことがあります。