南極の氷はどれくらい厚い?
平均で約2キロメートル。最も厚いところでは4700メートルを超え、富士山がすっぽり埋まるほどです。
4757m
南極大陸は、そのほとんどが雪と氷に覆われています。氷の広がりは約1400万平方キロメートル。日本の国土の36倍ほどの面積です。
ただ、上から眺めているだけでは、その氷がどれほど厚いのかはわかりません。南極の氷は、ぶ厚い板のように大陸にのっています。この「氷床(ひょうしょう)」の厚さは、いったいどれくらいあるのでしょうか。
平均すると、約2キロメートル
2025年3月、イギリス南極観測局などの国際チームが、南極の氷の厚さと、その下の地形をまとめた新しい地図「Bedmap3」を発表しました。約60年にわたって各国が集めてきた、8200万か所の観測データをもとにしたものです。
それによると、南極の氷床の厚さは平均で約2150メートル。海に張り出して浮いている「棚氷(たなごおり)」まで含めて平均しても、約1950メートルあります。東京スカイツリー(634メートル)を3本積み上げても届かない厚さの氷が、大陸全体を覆っているのです。
氷の量は、およそ2700万立方キロメートル。すべてとけたとすると、世界の海面は約58メートルも上がる計算になります。
いちばん厚いところは4757メートル
では、いちばん厚いところはどこでしょうか。以前は、東南極のアデリーランドにあるアストロラーベ盆地が最も厚いと考えられていました。ところがBedmap3でデータを見直したところ、そこから西へ離れたウィルクスランドにある名前のない谷で、厚さ4757メートルの氷が見つかりました。
富士山の高さは3776メートルですから、富士山をまるごと沈めても、山頂の上にまだ1000メートル近い氷が残る計算です。
氷の下は、海面より低い
これほど厚い氷の下には、どんな地形があるのでしょうか。氷を透かして見ることのできるレーダーを使った観測から、南極の岩盤には高い山脈もあれば、深い谷や盆地もあることがわかっています。
なかには、海面よりはるかに低い場所もあります。2019年、アメリカのカリフォルニア大学アーバイン校などのチームは、東南極のデンマン氷河の下にある谷の底が、海面下3500メートルを超えることを明らかにしました。海に沈んでいない陸地としては、世界でいちばん低い場所です。陸上で最も低い場所として知られる死海の湖岸でも海面下400メートルあまりですから、桁違いの深さです。西南極でも、岩盤が海面下2500メートルより深いところがあります。
3000メートルの氷を掘る
氷床は、何十万年ものあいだ降り積もった雪が、とけずに押し固められてできたものです。深く掘るほど古い氷が出てくるので、氷の中に閉じこめられた空気の泡などから、昔の地球の気候を調べることができます。
日本も、この氷の掘削に挑んできました。舞台は、昭和基地から南へ約1000キロメートル、標高3810メートルの氷床の上にある「ドームふじ基地」です。年平均気温はマイナス50℃を下回り、気圧は富士山の山頂よりも低い600ヘクトパスカルほどという厳しい場所です。ここで2007年1月、深さ3035メートルまで氷を掘り進めることに成功しました。いちばん深いところの氷は、およそ72万年前のもの。この氷の柱には、寒い氷期と暖かい間氷期がくり返してきた地球の歴史が記録されています。
現在は、さらに古い、100万年以上前の氷を手に入れようとする新しい掘削が進められています。2026年1月の時点で、深さは約1784メートルに達しました。