世界一大きな動物は?
シロナガスクジラです。体長は最大約30メートル、体重は200トン近くになります。
190トン
「地球の歴史上、いちばん大きな動物は?」と聞かれたら、多くの人は恐竜を思い浮かべるかもしれません。首の長い巨大な竜脚類は、たしかに陸の動物としては桁外れの大きさでした。けれど体の重さで比べるなら、最大の動物はどうやら今も生きています。
その名はシロナガスクジラ。私たちと同じ時代の海を泳いでいるこの哺乳類こそが、知られている限り地球史上で最も重い動物だと考えられているのです。
30メートル、190トンの体
シロナガスクジラの体長は、大きなものでおよそ30メートルに達します。25メートルプールよりも長く、新幹線の車両1両分(約25メートル)をゆうに超える長さです。
重さの記録で最もよく知られているのは、1947年に南極海で捕獲された体長27.6メートルのメスです。その体重は約190トン。大きなオスのアフリカゾウでも6トンほどですから、ゾウ30頭あまりに相当します。捕鯨が盛んだった時代には、ほかにも多くの巨大な個体が記録されました。
1909年には、南大西洋のサウスジョージア島の捕鯨基地で、体長約33.6メートルと記録されたメスもいます。ただ、当時の測り方がはっきりしないため、確かな最大値としては30メートル前後と考えるのが一般的です。
心臓は「自動車ほど」ではなかった
シロナガスクジラの心臓は「小型車ほどの大きさ」だと、よく言われてきました。ところが実物を調べてみると、この話は少し大げさだったことがわかります。
2014年、カナダのニューファンドランド島に打ち上げられたシロナガスクジラから、ロイヤル・オンタリオ博物館のチームが心臓を取り出しました。重さは約180キロ、大きさは小型のゴルフカートほど。とてつもなく大きいことに変わりはありませんが、車ほどではなかったのです。「大動脈の中を人が泳いで通れる」という話もありますが、実際の太さは人の頭がやっと入る程度とされています。
2019年には、カリフォルニア沖で野生のシロナガスクジラに吸盤で心電計を取りつけ、心拍を測ることにも成功しました。潜水中の心拍数は、最も遅いときで1分間にわずか2回ほど。息継ぎのために水面へ戻ると、1分間に25〜37回まで跳ね上がりました。研究者たちは、この心臓がほぼ限界まで働いていることが、クジラがこれ以上大きくなれない理由のひとつかもしれないと考えています。
数センチの獲物で巨体を養う
この巨体を支えている食べものは、体長わずか数センチのオキアミです。エビに似た小さな甲殻類で、海の中で巨大な群れをつくります。
シロナガスクジラには歯がありません。代わりに、上あごから「ひげ板」と呼ばれるくしのような板が何百枚も垂れ下がっています。のどのひだを大きくふくらませ、オキアミの群れを海水ごと口いっぱいに取り込むと、ひげ板でこして水だけを外へ押し出すのです。
2021年に発表された研究では、クジラの体に取りつけた記録装置や魚群探知機のデータから、成熟したシロナガスクジラは採食シーズン中、1日に平均およそ16トンものオキアミを食べていると見積もられました。それまで考えられていた量の約3倍です。地球最大の動物は、ほんの数センチの生きものを大量に食べて生きているのです。
恐竜にも、太古のクジラにも負けない?
では恐竜と比べるとどうでしょう。アルゼンチノサウルスなど最大級の竜脚類は、体長では30メートルを超えたとも考えられています。しかし体重の推定は数十トンから100トン前後まで幅があり、骨の化石から重さを割り出すのは簡単ではありません。それでも、重さではシロナガスクジラが上回るという見方が一般的です。
2023年には、ペルーで見つかった約3900万年前のクジラ「ペルケトゥス・コロッスス」の化石が、シロナガスクジラに匹敵するか、それ以上に重かった可能性があると発表されて話題になりました。ところが2024年の再検討では、体重は60〜70トンほど、大きく見積もっても110トン余りとされ、王座はやはりシロナガスクジラのものという見方が出ています。
ちなみに「長さ」だけで比べるなら、2020年にオーストラリア西岸沖の深海で見つかったクダクラゲの仲間が、渦を巻いた外周部分だけで約47メートルあると推定されています。ただしクダクラゲは小さな個体がたくさん連なった群体で、1頭の動物と同じ土俵で比べてよいかは意見が分かれるところです。