世界一長生きな動物は?
答え
年齢が確かめられた記録では、507歳の二枚貝「ミン」。脊椎動物ならニシオンデンザメです。
507歳
2006年、アイスランド北部の海底から一枚の二枚貝が引き上げられました。手のひらに収まるほどの、見た目には何の変哲もない貝です。ところが研究者が殻を調べてみると、この貝はおよそ500年前、西暦1499年ごろに生まれていたことがわかりました。
コロンブスの航海からまだ数年、日本では戦国時代が始まったばかりのころです。その時代から21世紀まで、この貝は冷たい海の底で静かに生き続けていたことになります。
殻に刻まれた500年の日記
この貝はアイスランドガイ(学名 Arctica islandica)という種類で、のちに「ミン(Ming)」という愛称がつけられました。最初の分析で推定された年齢が405歳で、生まれた時期が中国の明(ミン)王朝の時代にあたったことにちなんでいます。
年齢がわかるのは、殻に木の年輪のような成長線が毎年一本ずつ刻まれるからです。その後の詳しい再調査で数え直され、ミンの年齢は507歳と改められました。年齢を直接確かめられた動物の個体としては、これが知られている限り最長の記録です。
ただ、少し切ない話も残っています。年齢を調べるために殻を開いたことで、ミンはその時点で命を落としていました。調査した側も、まさかそれほどの長寿だとは思っていなかったのです。
150歳でようやく大人になるサメ
背骨をもつ動物、つまり脊椎動物の中で最も長生きと考えられているのが、北大西洋や北極海の冷たい深海にすむニシオンデンザメです。
2016年に発表された研究では、サメの目のレンズの中心部に含まれる放射性炭素を手がかりに年齢が推定されました。レンズの中心は胎児のころにつくられ、その後は入れ替わらないため、生まれた時期の「記録」が残っているのです。その結果、体長5メートルを超える最大の個体は推定392歳。ただし誤差はプラスマイナス120年と大きく、「約400年」はあくまで目安です。
驚くのは成長のゆっくりさです。体は1年に1センチほどしか伸びず、子どもを産めるようになるまでに150年ほどかかると見積もられています。冷たい水の中で、何もかもをゆっくり進める。それがこのサメの長生きの秘訣なのかもしれません。
陸に目を向けると、ゾウガメの仲間も長寿で知られます。ガラパゴスゾウガメは100年以上生きることが珍しくなく、南大西洋のセントヘレナ島には、1832年ごろに生まれたと推定されるゾウガメ「ジョナサン」が今も暮らしています。
そもそも「長生き」とは何か
ここまでの話には、実はひとつ前提があります。「一匹の個体が、生まれてから何年生きたか」という物差しで比べている、ということです。
この物差しを少し変えると、順位はがらりと変わります。たとえば深海のサンゴやカイメンの中には、4000年を超えると推定される群体があります。ただし群体は小さな個体がたくさん集まったもので、一匹の寿命と同じように比べてよいかは意見が分かれます。
さらに極端なのが、ベニクラゲです。このクラゲは弱ったり傷ついたりすると、成熟したクラゲの姿から、若いころの「ポリプ」と呼ばれる段階へと逆戻りすることがあります。そこから再び成長してクラゲになるため、理屈の上では寿命の終わりを何度も先送りできることになります。
生き続けることと、年を重ねることは、必ずしも同じではない。ベニクラゲはそんな問いを投げかけてきます。もっとも、自然界では食べられたり病気になったりするので、実際に永遠に生きる個体がいるわけではありません。