世界一速い動物は?
答え
急降下するハヤブサです。時速389kmという記録があります。
389km/h
「いちばん速い動物は?」と聞かれたら、多くの人がチーターを思い浮かべるでしょう。地上を走る動物に限れば、その答えは正解です。けれど空まで含めると、王座はあっさり別の動物に移ります。
その動物とは、ハヤブサです。ただしハヤブサが速いのは、水平に飛んでいるときではありません。獲物をめがけて空から落ちていく、あの急降下のときです。
空から落ちる弾丸
ハヤブサは上空から獲物の鳥を見つけると、翼をたたんで真っ逆さまに降下します。この急降下は英語で「ストゥープ」と呼ばれ、ハヤブサの狩りの最大の武器です。
よく引用される**時速389キロ(時速242マイル)**という数字は、1999年にアメリカの鷹匠が行った実験に由来します。彼は訓練したハヤブサを高度5000メートルほどの飛行機から放ち、自分もスカイダイビングで追いかけました。ハヤブサの体には高度計を取りつけ、落ちる速さを記録したのです。
ただし、これは人が条件を整えた特別な記録です。野生のハヤブサがふだんの狩りでそこまで速度を出しているとは限らず、実際の急降下はもっと遅いことが多いと考えられています。それでも、生きものが自分の力で到達した速さとしては、ほかに並ぶもののない数字です。
チーターは「加速」の天才
地上最速はやはりチーターです。最高時速は100キロ前後、ときに110キロ以上ともいわれますが、この数字にもかなり幅があります。
2013年には、野生のチーターに特製の首輪をつけ、実際の狩りで走る様子を測った研究が発表されました。記録された最高速度は時速約93キロ。そして研究者たちが注目したのは、最高速度よりもむしろ、加速や減速、急な方向転換の鋭さでした。
チーターの全力疾走は長くは続きません。数百メートルも走ると体温が上がり、息が切れてしまいます。だからこそ、一瞬で最高速に達し、逃げる獲物の動きに合わせて鋭く曲がる力が、狩りの成否を分けるのです。
海の最速は、少しあやしい
海の最速候補としてよく名前が挙がるのが、大きな背びれをもつバショウカジキです。図鑑などでは「時速110キロ」と紹介されることがあります。
ところが、この数字の根拠はかなり心もとないものです。古い釣りの記録で、かかった魚が釣り糸を引き出す速さから見積もられたといわれ、魚そのものの速さを正確に測ったわけではありません。
2016年に発表された研究では、筋肉が縮む速さなどからバショウカジキの最高速度を推定し、平均で秒速8メートル余り、時速にして30キロほどという結果が出ました。さらに、それ以上の高速では水中にできる気泡がひれを傷めてしまうため、秒速10〜15メートルを超えるのは難しいだろうとも指摘されています。「時速110キロ」は、いまのところ伝説に近いと考えたほうがよさそうです。
物差しを変えれば、王者も変わる
急降下を除き、羽ばたいて水平に飛ぶ速さで比べると、話はまた変わります。2016年には、メキシコオヒキコウモリが時速160キロに達したという研究が報告されました。ただ、測定方法には慎重な見方もあり、確定した記録とはいえません。
持久力まで含めると、北米の草原にすむプロングホーンの名前も外せません。最高速度ではチーターに及ばないものの、時速50キロを超えるスピードを数キロにわたって保てるといわれます。
結局のところ、「速い」にはいくつもの意味があります。落ちる速さ、走る速さ、泳ぐ速さ、そして一瞬の加速。どの物差しを選ぶかで、チャンピオンの顔ぶれは入れ替わります。