野球のホームベースはなぜ五角形?
ストライクの左右の端を審判が見きわめやすくするためで、1900年に五角形になりました。
43.2cm
野球のダイヤモンドに置かれた4つのベースのうち、一塁、二塁、三塁はどれも正方形です。ところが、打者が立つホームベースだけは、将棋の駒を逆さにしたような五角形をしています。
ほかのベースとそろえたほうが、作るのも覚えるのも簡単そうです。それなのに、なぜホームベースだけが特別な形をしているのでしょうか。歴史をたどると、この形はベースがたどってきた二度の「変身」の結果だったことがわかります。
最初は丸い鉄板だった
19世紀半ばのアメリカで、野球のルールが整えられはじめたころ、ホームベースは丸い形をしていました。1857年から1867年ごろまでは、白く塗った円形の鉄板が使われ、その大きさはおよそ1平方フィート、直径にすると30センチあまりでした。
1868年になると、ホームベースは一辺12インチ(約30.5センチ)の正方形に改められます。さらに1871年には、当時のプロリーグであるナショナル・アソシエーションが、この正方形を45度回転させて置くようにしました。角の一つが投手のほうを、反対側の角が捕手のほうを向く、ひし形の置き方です。素材は石や鉄、木などまちまちでしたが、白い12インチの正方形という形は、19世紀の終わりまで続きました。
ひし形のベースの弱点
ひし形に置いたホームベースには、困った点がありました。ストライクかボールかを判定するとき、ベースの左右の端、つまり内角と外角の境目は、横に突き出した二つの角で決まることになります。投手から見ると、ベースは手前に尖った角を向けており、ボールがどこを通ればストライクなのかを示す「辺」が見えません。審判にとっても、点でしかない角を目印にして、左右の境目を見きわめるのは簡単ではありませんでした。
この問題を解決したのが、五角形のベースです。考案したのは、1887年にボルチモア・オリオールズでたった1試合だけ投げた元投手、ロバート・キーティングだとされています。投手と審判の両方の苦労を知っていた人物でした。
1900年に生まれた五角形
キーティングの五角形は、1900年にナショナル・リーグで採用されました。投手側には幅17インチ(約43.2センチ)のまっすぐな辺があり、そこから打席と平行に8.5インチの辺が両側に伸び、最後は12インチの2辺が直角に交わって捕手側の頂点になります。
この形のおかげで、ストライクゾーンの左右の端は、まっすぐな辺としてはっきり見えるようになりました。判定がそろいやすくなったことが、五角形のいちばんの利点だったとされています。捕手側の尖った頂点が直角なのは、一塁線と三塁線がホームベースで直角に交わるからです。
ここで、昔のひし形のベースを思い出してみましょう。一辺12インチの正方形を45度回して置くと、左右の角から角までの幅は、対角線の長さになります。計算すると約17インチ。じつは、新しい五角形の幅と、ほぼ同じなのです。ストライクの幅は変えずに、形だけを見やすく整えた、と見ることもできます。
石からゴムへ
形と同時に変わったのが素材です。五角形のベースは、白いゴムでつくることと定められました。石や鉄のベースは、滑り込んだ走者がけがをするおそれがありましたが、ゴムならその心配が少なくなります。
日本の公認野球規則でも、本塁は五角形の白いゴム板と定められています。審判が試合中にこまめにブラシで本塁の土を払うのも、この白い五角形の輪郭がきちんと見えていることが、正確な判定に欠かせないからなのです。