身長は朝と夜で変わる?
変わります。日中は背骨のクッションが押し縮められて夜には1〜2センチ低くなり、眠るとまた元に戻ります。
19mm
健康診断で身長を測ったら、思っていたより少し低かった。そんな経験はないでしょうか。測り間違いとは限りません。人の身長は、1日のうちに少しずつ変わっているのです。
朝起きたときがいちばん高く、夜に向かってだんだん低くなる。その差は、およそ1〜2センチほどになります。いったい体のどこが縮んでいるのでしょうか。
300年前の牧師の発見
このことに早くから気づいていた人がいます。イギリスのエインホーという村の牧師、ワッスです。1724年、イギリス王立協会の学術誌に、彼の手紙が掲載されました。
ワッスは、身長がわずかに基準に足りないという理由で兵士が除隊させられるのを見ていました。そして朝と夜とで人の身長が違うことを知っていたので、それを士官に伝え、何人かが軍をやめさせられずにすんだといいます。
その後、ワッスは座りがちな人から肉体労働者まで、さまざまな人を測り、朝と夜の差は「1インチ近く」、つまり2.5センチ近くあると書いています。自分でも、庭のローラーを30分ほど引いたり、何時間も机に向かって勉強したりしたあとで、背が低くなることを確かめました。その原因について、ワッスは背骨の骨と骨のあいだの軟骨が、まっすぐ立った体の重みでつぶれるためだろうと考えています。
縮むのは、背骨のクッション
ワッスの考えは、ほぼ正しいものでした。私たちの背骨は、椎骨という骨が首から腰まで積み重なってできていて、そのあいだに「椎間板」という円盤状のクッションが、全部で23枚はさまっています。
椎間板は、たくさんの水分を含んでいます。立ったり座ったりしているあいだは、上半身の重みがかかり続けるので、椎間板から少しずつ水分がしぼり出され、厚みが減っていきます。夜、横になって体重がかからなくなると、椎間板は再び水分を取りこんでふくらみます。1枚1枚の変化はわずかでも、23枚ぶんが合わさると、身長の違いとしてはっきり表れるのです。
起きてから1時間で、半分以上
では、1日のうちにいつ縮んでいるのでしょうか。1985年にイギリスの研究者たちが、若い大人8人の身長を1ミリ単位で測ったところ、1日のうちの変化は平均19.3ミリで、身長の約1.1%にあたりました。
おもしろいのは、その縮み方です。1日に縮むぶんの54%が、朝起きてから最初の1時間で起きていました。起き上がって体重がかかりはじめると、椎間板は一気に縮むのです。反対に、夜は眠りはじめてから前半のうちに、縮んだぶんの約70%が戻っていました。
重い荷物を持つと、縮み方はさらに大きくなります。別の研究では、経験を積んだランナーが25キロメートル走って縮んだぶんよりも、ふつうの1日のなかで変わる幅(平均14.4ミリ)のほうが大きかったといいます。ふだんの生活だけで、背骨はそれだけの重みを受けているのです。
測るなら、同じ時間に
身長の変化を正しく比べたいなら、毎回同じくらいの時間に測るのがよさそうです。少しでも高い数字を出したいなら、朝いちばんが有利ということになります。
ちなみに、体重のかからない宇宙では、椎間板がもっとふくらんで、宇宙飛行士の身長は数センチ伸びることがあります。地上で起きている毎日の小さな変化を、ぐっと大きくしたようなものです。
一方で、朝の椎間板には注意も必要です。椎間板が水分をたっぷり含んだ朝は、背骨が前かがみの動きに負担を受けやすく、時間がたって水分が減ると、椎間板は傷みにくくなることが実験で示されています。起きてすぐに重いものを持ち上げるときは、少し気をつけたほうがよさそうです。